電気自動車(EV)への移行が世界的に加速する中、自動車部品メーカーの間で調達競争が激化している。従来のエンジンやトランスミッションといったガソリン車向け部品の需要が減少する一方、モーターやバッテリー、インバーターなどEV向け部品の需要が急拡大。日系サプライヤーは、これまでのビジネスモデルからの転換を迫られており、生き残りをかけた変革が急務となっている。
EVシフトが部品業界に与える影響
自動車業界はかつてない変革期を迎えている。世界各国でEV販売の義務化やガソリン車販売禁止の動きが広がり、自動車メーカーはEVへの投資を加速。これに伴い、部品メーカーの事業環境も大きく変化している。エンジンや排気系、燃料系など、ガソリン車に不可欠だった部品の需要は長期的に減少することが確実視されており、これらの部品を主力とするサプライヤーは新たな収益源の確保が急務だ。
一方、EVに必要な部品はガソリン車とは大きく異なる。モーターやバッテリー、パワーコントロールユニット、DC-DCコンバーターなど、電動化に特化した部品の需要が急増。さらに、EVは部品点数がガソリン車の約3分の1に減少するとされ、サプライヤーにとっては事業の縮小を意味する可能性もある。このため、各社はEV向け部品へのシフトと同時に、新しい領域での事業拡大を模索している。
日系サプライヤーの現状と課題
日本には多くの自動車部品メーカーが存在し、その多くがガソリン車向け部品を主力としてきた。トヨタ自動車グループのデンソーやアイシン、日産自動車系のカルソニックカンセイ(現マレリ)など、大手サプライヤーもEVシフトの影響を大きく受けている。これらの企業は、電動化対応部品の開発を進めているが、ガソリン車向け事業の縮小に伴う雇用維持や設備投資の効率化など、多くの課題に直面している。
特に、中小の部品メーカーにとっては、EV向け部品への転換に必要な研究開発費や設備投資の負担が大きく、生き残りが厳しい状況にある。経済産業省の調査によると、自動車部品サプライヤーの約7割が何らかの事業転換を迫られているとされる。また、EVシフトに伴い、部品調達のグローバル競争も激化。中国や韓国のサプライヤーが低コストでEV部品を供給する中、日系サプライヤーは品質や技術力で差別化を図る必要がある。
調達戦略の変化とサプライヤーへの影響
自動車メーカーの調達戦略も変化している。EVではバッテリーやモーターなど、特定の部品の重要性が高く、メーカーはこれらの戦略的部品を内製化する動きを強めている。例えば、トヨタは子会社のプライムアースEVエナジーを通じてバッテリー生産を強化。日産も独自のバッテリー技術を開発している。こうした動きは、サプライヤーにとっては受注機会の減少につながる可能性がある。
一方で、EVの普及に伴い、充電インフラや電力マネジメントシステムなど、新しい市場も生まれている。サプライヤーは、こうした周辺領域への進出も視野に入れた事業戦略が求められる。また、自動運転技術の進展に伴い、センサーや制御システムなど、新たな部品需要も発生している。日系サプライヤーは、長年培ったモノづくりの技術を活かし、これらの新市場で競争力を発揮できるかが問われている。
今後の展望とサプライヤーの生き残り戦略
EVシフトは不可逆的な流れであり、部品メーカーは早急な対応を迫られている。専門家は、今後10年以内に多くのサプライヤーが統廃合されると予測する。実際、2022年には日立製作所と本田技研工業の合弁会社である日立Astemoが、EV向け部品事業を強化するために新会社を設立するなど、業界再編の動きが活発化している。
生き残るための戦略として、まずはEV向け部品の開発力強化が不可欠だ。特に、パワー半導体や熱マネジメントシステムなど、EVの性能を左右する重要部品での競争力が鍵を握る。また、従来のガソリン車向け部品の生産技術をEV部品に応用するなど、既存の技術を活かした転換も有効とされる。さらに、自動車メーカーとの連携を強化し、開発段階から関与することで、安定した受注を確保する取り組みも重要だ。
加えて、M&Aや提携を通じた事業ポートフォリオの見直しも必要となる。例えば、デンソーは2023年に、車載半導体やセンサー分野での事業拡大を目的に、複数の企業と提携を発表。アイシンも、EV向け駆動モジュールの生産能力を増強するため、工場への投資を加速している。こうした積極的な投資が、今後の競争力を左右するとみられる。
一方で、政府の支援も重要だ。経済産業省は、自動車部品サプライヤーの電動化対応を促進するため、補助金や税制優遇措置を拡充。また、中小サプライヤー向けの技術開発支援や人材育成プログラムも実施している。これらの政策を活用し、サプライヤー各社は変革を加速させる必要がある。
結論として、EVシフトは自動車部品業界に大きな変革を迫っている。日系サプライヤーがこの競争を勝ち抜くためには、従来のビジネスモデルからの脱却と、新たな技術への積極的な投資が不可欠だ。業界再編の波が押し寄せる中、各社の経営判断が今後の生死を分けることになる。自動車産業のサプライチェーン全体が、かつてない転換点を迎えていると言えるだろう。



