北海道の地域課題をデジタル技術で解決しようと、北海道庁が開催する地域課題解決型ピッチイベント「UPDATE 179」の3回目が、2026年7月31日に札幌市のHooK EVENT LOUNGEで開催された。道内外14社が登壇し、医療MaaSやAIを活用したヒグマ対策、水道管の劣化診断などのソリューションを披露した。自治体と企業が直接対話する「共創ミートアップ」も初めて独立したプログラムとして設けられた。
14社が北海道の課題に挑む多彩なソリューション
プログラムは「第1部・地域課題解決型ピッチ」「第2部・共創ミートアップ」の2部構成。第1部では企業が自社のソリューションについて5分程度のプレゼンテーションを行い、司会者からの質問に答えるスタイルで進行した。登壇した14社の分野は保健・福祉、交通、鳥獣対策、一次産業、地域創生、暮らし、インフラと多岐にわたった。
MONET Technologiesは、医師と患者をオンラインで接続し、患者の自宅を訪れる車に看護師が同乗して検査や処置を実施する医療MaaSのソリューションを紹介。すでに網走市で導入され、今年度から周辺自治体での広域利用の試行も始まっている。
NTTドコモビジネスは「見つける・知らせる・近づけない 共存型熊対策」と題し、通信やドローン、AI、管理システム等を活用した一気通貫のヒグマ対策ソリューションを説明。酪農学園の認定ベンチャー企業インターリージョンは、GISを利用したヒグマのゾーニング計画策定支援ソリューションを紹介した。
NINAITEは外国人雇用におけるビザ申請の手続きや管理、採用マッチング、定着支援をAIで支援するソリューションを解説。Fracta Japanは水道管の劣化をAIで診断して漏水確率を算出し、見える化するソリューションをプレゼンした。
共創ミートアップとマッチング事例の共有
第2部では、各企業のピッチに興味を持った自治体が企業と自由に交流し、課題の相談や情報交換を行った。前回はピッチと同時進行だったが、他のピッチも聴きたいとの要望に応え、今回は独立したプログラムとして設定された。
1部と2部の間には、これまでの取り組みでマッチングが行われた事例について双方の担当者が紹介するトークセッション「マッチング事例に学ぶ地域のDX」も開催。幕別町とはんぽさきによる「地図情報アプリを活用した組織内情報の共有と可視化」、石狩市とCarbonNestによる「寒冷地におけるDACを活用した大気中からのCO2直接回収の実証実験」の2事例が語られた。
自治体は現地参加に加えてオンラインでもピッチを視聴。各企業のピッチ後は「もっと話をきいてみたい!」「また次の機会に!」の2択で答えるアンケートが実施され、「もっと話をきいてみたい!」という回答は計134票に達した。市町村および地域関係者の参加者は会場とオンラインを合わせて約200人だった。
「知ってもらう」から「次のアクション」へ
事業主体である北海道経済部の青山大介氏は「北海道は課題の先進地といわれますが、裏を返せば日本の未来を切り開く可能性が高い地域だと考えています。新しい技術をアップデートし、現場で実証して社会実装につなげ、地域の課題を解決していくことが大事です」と挨拶した。
北海道経済部で地域DX推進係長を務める森永陽一朗氏は、イベントの目的について「UPDATE 179は企業の皆様に自社の技術やサービスを紹介いただくだけではなく、市町村をはじめとする地域の皆様と企業の皆様がこの場で直接対話し、地域の課題やニーズを共有して掘り下げ、新たな連携や実証実験、さらには地域社会への実装まで進むきっかけになることを目指し開催しています」と語った。
ピッチ後のアンケートを「興味ある」「興味なし」の2択から「もっと話をきいてみたい!」「また次の機会に!」の2択に変更した理由について、森永氏は「UPDATE 179はピッチを順位付けするコンテストではなく、できるだけ多くのマッチングにつなげようという場ですので、この場でより共創の芽が生まれやすい行動ベースの質問に発展させました」と説明した。
2025年度の同事業では、実証やその前段階となる覚書締結等に至った事例が12件生まれた。森永氏は「事業者と自治体担当者の熱量や、実際の予算化につなげるまで共に悩んだ話」に最も注目したという。
事務局を務めるNTT MEの高橋裕太氏は「市町村職員も、企業が提供するサービスを自分たちだけで調べるのはやはり限界がありますし、実際にどう探せばいいかわからない、アプローチの仕方がわからないという声もよく聞きます。その点、スタートアップから大企業までさまざまな企業のソリューションを知ることができ、さらにマッチングまで発展できるところが、このイベントの大きな意義だと考えています」と話した。
会場となったHooKについて森永氏は「HooKでは、これからまさにスタートアップ企業や支援機関などさまざまなプレイヤーが自治体等と連携して共創を行い、新しい事業を生み出していきます。その意味で、HooKという場所はUPDATE 179のコンセプトとも非常に親和性が高いと考えています」と説明した。
今後について森永氏は「これまでと同じ方法では地域の暮らしを支える行政サービスの維持が難しくなっています。これからも本イベントと事業を通じてマッチング事例を生み出し、さらには同様の課題を抱える道内他地域にも横展開したいと思っています。また、最後はやはり“人”ですので、地域へのデジタル技術の実装をコーディネートするキーパーソンの育成にも取り組んでいきたいと考えています」と語った。高橋氏は「NTTグループとしても、道内外のネットワークを活かしながら北海道の地域課題解決につながる取り組みを引き続き実践していきます」とし、「併せて、この事業を通じて北海道は地域課題解決の取り組みが活発だというイメージを生み、他の地域でも『自分たちもできる』という意識や機運の醸成につなげていければと思います」と締めくくった。



