アジアパラ新会場、最初は険悪なムードから「いい空間」に 入谷さん振り返る
アジアパラ新会場、険悪なムードから「いい空間」に

2025年9月、名古屋市北区のIGアリーナ(正式名・愛知国際アリーナ)で開かれた英ミュージシャン、スティングのライブ。愛知県重度障害者団体連絡協議会の事務局長を務める入谷忠宏さん(56)は2階の車いす席に入って「サイトライン(見通し)がしっかりしている。いい空間だな」と思った。「一緒に造った気持ちがわいた」と語る。

地下通路からスムーズに入場

往年の名曲を知る洋楽ファンで、心待ちにしていた日だった。電動車いすに乗り、介助者と早めに出掛けた。最寄り駅は市営地下鉄の名城公園駅。改札を出て、地下の連絡通路に設けられたエレベーターでそのままアリーナ2階のデッキへ。目の前のゲートからスムーズに入場した。

ライブが始まると前列のファンが立ち上がった。それでも車いす席は十分な勾配があって、「頭や背中が景色」になることはなかった。最後のアンコール曲までライブを満喫できた。「観客との一体感があった。アリーナを一緒に造ったという気持ちもわきました」と振り返る。

国内最大級の多目的アリーナ

IGアリーナは「既存施設の活用」をうたうアジア・アジアパラ競技大会を前に、古くなった愛知県体育館の代替として県が唯一、新設を計画。PFIの手法で特別目的会社の愛知国際アリーナ社が建設から運営まで担い、25年春に名城公園内に完成した。公園の自然を意識した木材配置の外観などは建築家・隈研吾氏によるデザインだ。

5階建てで、メインアリーナの天井高は約30メートル。映像や音響などの最新機器を備え、最大1万7千人(立ち見含む)を収容する。アジア大会でバスケットボールや柔道の会場になり、18日に開幕するアジアパラ大会では車いすバスケットボールが行われる。

アクセシビリティーへの配慮

国基準の約2倍まで増やせる車いす席、難聴者の聞こえを助けるヒアリングループ、気持ちを落ち着かせるためのカームダウン室のほか多機能トイレも多く、アクセシビリティー(利用しやすさ)にも配慮した施設だ。

県やアリーナ社によると、新国立競技場(東京)などの設備を参考にする一方、県条例に基づき障害者や高齢者、子育て世代などの幅広い団体から意見聴取を繰り返した。だが、「最初は険悪なムードだった」とスティングのライブを楽しんだ入谷さんは振り返る。