踏切事故防止へ「AIカメラ」導入進む、異常検知し運転士に即通知
踏切事故防止へAIカメラ導入進む、異常検知し運転士に通知

全国の鉄道踏切で、AI(人工知能)カメラの設置が進んでいる。踏切内に立ち往生する人などを検知すると、速やかに列車の運転士に知らされ、事故防止に大きな効果が期待できる。国は鉄道事業者の設置費用を助成するなどし、普及を後押ししている。

西武池袋線の踏切で常時監視

住宅街を縫うように走る西武池袋線の「池袋9号踏切」(東京都豊島区)では、線路沿いの支柱に小型のAIカメラが取り付けられ、踏切内を常時監視している。

この踏切では朝のラッシュ時、1時間に50本以上の列車が通過し、西武鉄道の担当者は「事故リスクの高い踏切の一つ」と語る。2021年4月には、踏切内に取り残された60歳代の男性が電車にはねられて死亡する事故が発生。押していた台車が踏切の溝に挟まり、逃げ遅れたのが原因だった。

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異常を検知し運転士に即時通知

AIカメラは、踏切内の映像をリアルタイムで解析し、異常を検知すると運転士に即座に知らせる仕組みだ。池袋9号踏切の場合は、遮断機が下がった後に人や自転車が3秒とどまると、線路脇の特殊信号が発光し、運転士が察知する。

踏切内で人が転倒するなどの異常は、運転士の目視か、踏切内の非常ボタンで覚知するのが一般的だ。見通しの悪さで異常に気づくのが遅れたり、非常ボタン近くに人がいなかったりすると、急ブレーキをかけても間に合わない。

同鉄道の担当者は、「(AIカメラは)踏切の非常ボタンをAIが押してくれるようなシステムで、これまで救えなかった命が救えるようになる」と語る。

事故は年間200件前後で推移

踏切内の事故は、後を絶たない。国土交通省によると、全国の踏切で発生する事故は昨年度までの10年間、毎年200件前後で推移している。25年度は184件で、65人が死亡、84人が負傷した。このうち歩行者や自転車などが踏切を渡りきれなかった事故は98件で、事故防止には踏切内の異常を早期発見することが欠かせない。

このため、踏切内のAIカメラは鉄道各社で設置が進む。西武鉄道は池袋9号踏切を手始めに計7か所に新設した。名古屋鉄道の設置箇所は計57か所に上る。

小田急電鉄でも今年6月、踏切4か所にAIカメラを導入。異常時に特殊信号が発光するだけでなく、列車に自動でブレーキがかかるシステムを設けた。導入から2か月間で、線路内の異常を覚知した列車が17回緊急停止したという。

国が設置費用を補助、地方への普及も期待

国土交通省は今年度から、AIカメラを活用した踏切内の監視システムを導入した鉄道事業者に対し、設置費用のうち最大半額を補助している。

鉄道会社には、線路内の異常をレーザー光などで検知する装置を設けるところもあるが、数千万円のコストがかかるものもあり、導入はJR東日本や大手私鉄など一部にとどまる。

AIカメラは1か所当たりの初期費用が数百万円で済むメーカーもあり、国交省の担当者は「財政が厳しい地方の事業者にも取り入れやすい」と期待する。

工学院大の高木亮教授(電気鉄道工学)は「AIを活用しているから100%安全とは言い切れない」としつつも、「事故防止に極めて有効」と指摘。「事故を撲滅するには事業者や自治体が鉄道を高架化させるなど踏切を減らす努力も必要だ」としている。

鉄道以外でもAIカメラの導入進む

AI機能を活用した「AIカメラ」は鉄道以外でも導入が進んでいる。

東京・渋谷駅前の複合ビル「渋谷スクランブルスクエア」では、今年4月からAIカメラの本格運用を開始。既存の監視カメラ約650台のうち50台の映像をサーバー経由でAIが解析。エスカレーター付近での転倒や客同士のトラブルなどを見張っている。

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サービスを提供する「アジラ」(東京)によると、同社のシステムは全国約200の商業施設や大学、駅などで稼働しているという。

富山市では、クマ対策のためのAIカメラを導入。昨年10月からはカメラがクマを検知すると、自動的に防災行政無線が放送され、注意を呼びかける機能を追加した。

神奈川県山北町で建設が進む新東名高速道路の工事現場では、作業員の熱中症リスクを事前に検知するAIカメラを活用する。顔をタブレット画面にかざすと、熱中症リスクが段階別で表示される。