Gartnerは2026年8月5日(現地時間)、最高サプライチェーン責任者の55%がAI投資の投資利益率(ROI)を明確に評価できていないとの調査結果を公表した。サプライチェーン分野のデジタル投資では67%がAIに配分された。AIへの資金投入が広がる半面、収益への貢献を示せない組織が過半数を占めた。
AI変革管理を適正規模で実施、2030年にROI2倍と予測
同社は、AI投資から明確で前向きな収益を得るには、変革管理の実施をAI戦略、サプライチェーン戦略、全社優先課題と結び付ける必要があるとした。限られた変革管理資源を個別活動ではなく、事業成果へ配分する「適正規模」の戦略を求めた。
Gartnerのロレイン・ギャビン氏(サプライチェーン部門 シニア・プリンシパル・アナリスト)は、組織は個別施策の変革実行力を高めてきたと説明した。現在の課題は、限られた変革管理資源をどこへ投じ、事業上の主要成果を支えるかの判断にあると指摘した。AIの普及により、その判断の重みが増したと述べた。
2つの調査を実施、デジタル投資の配分とAI活用例を検証
Gartnerは次のように2つの調査を実施した。実施期間は2025年11月~2026年2月、年間売上高2億5000万ドル以上の組織に所属するサプライチェーン責任者394人を対象に、デジタル投資の配分を調べた。2026年1~4月は上級サプライチェーン幹部135人を対象に、AI活用例と投資利益率を調査した。
AIの急速な進化で活用例が増え、組織の変革管理手法の整備が追い付かない状況も示した。同社は、個別施策の実行手順や活動を定める「変革方法論」と、限りある資源を複数のAI施策へどう配分し、サプライチェーンと全社の目標を達成するかを定める「変革戦略」を区別した。最高サプライチェーン責任者には、事業成果と変革投資を結び付け、AI導入の断片を防ぐ戦略の策定を促した。
適正規模の変革管理でROI2倍、経営層の育成も提言
Gartnerは、AI施策の増加を受け、固定的で画一的な手法から離れ、狙う成果に応じて変革投資を配分すべきだとした。適正規模の変革管理を採る組織は2030年までに、従来の方法論へ依存する組織と比べ、AI施策の投資利益率が2倍になると予測した。
改善策として、AI変革管理を独立した戦略分野として制度化し、AI技術戦略を支える基盤を築くよう提言した。変革管理能力を稀少資源と捉え、サプライチェーンの成果と投資利益率への貢献が高いAI施策へ集中させる必要も挙げた。施策ごとの規模、速度、組織状況に応じて変革手法を組み替える構成型の実行方式も示した。
経営層の育成も柱とした。事業感覚、人材育成、リスク管理の能力を備え、AIを使う変革を導ける人材を育てるよう求めた。技術導入だけでなく、成果の優先順位や資源配分、実行方法、指導力を一つの戦略として扱う姿勢が、AI投資の収益性を明確にする条件になるとの見方を示した。
同社は、変革資源を個々の活動へ積極的に振り分けるのではなく、業界とサプライチェーンの優先課題に直結する成果へ重点配分する考えを示した。AI施策ごとに必要な支援の規模や速度は異なるため、単一の標準手法ではなく、状況別に設計した実行方式を採用する必要があるとした。その上で、限られた能力を高価値の施策へ集中させ、AI導入の断片を防ぐ仕組みが必要だとした。



