ラトビアで「スマホ農場」摘発、4900万超の偽アカウント生成か
ラトビアで「スマホ農場」摘発、4900万超の偽アカウント生成か

バルト三国のラトビアで2025年10月10日、国家警察の対テロ部隊が組織の拠点に突入した。扉をたたき壊して入った薄暗い部屋には、棚が何列も並び、黒や灰色の「箱」が整然と置かれていた。赤や緑のランプが点滅し、箱からは細長い板状の部品が何本も突き出していた。これは、スマートフォンに1枚ずつ入れるSIMカードを一つの箱に何十枚も収めてまとめて操作する機器で、人間がスマホに触らなくても、それぞれの電話番号でメッセージの受信などができる。

「農場」が生んだ4900万超のアカウント

摘発されたのは大規模な「SIMファーム(農場)」だ。いわゆる「スマホ農場」の一種で、膨大な数のSIMを畑のように並べて「栽培」し、通信を同時に休みなく働かせるための装置という。

ラトビア国家警察と行動を共にした欧州警察機構(ユーロポール)の発表によると、「農場」の運営者らは、世界各地の犯罪者が詐欺などの犯罪に使うための80を超える国の電話番号を貸し出すオンラインサービスを提供していた。作戦ではこの拠点を含む26カ所を捜索し、4万枚のSIMカードを稼働させていた約1200台の「箱」を押収した。稼働していなかったものも含めると、作戦で確保したSIMカードの数は数十万に及ぶ。「農場」の稼ぎで手に入れたとみられる赤いポルシェなど高級車4台も差し押さえた。

詐欺や児童虐待コンテンツにも悪用

「農場」のサービスを使えば、自らの番号を明かすことなく本人確認の手続きを進めることができ、身元や居場所を隠した「偽アカウント」を作ることができる。生み出されたアカウントは4900万件を超える。詐欺だけでなく、恐喝や移民の密入国のあっせん、児童の性的虐待コンテンツの流通などにも悪用されていたという。

こうした犯罪で被害者に生じた損害は、数百万ユーロに達するとみられる。捜査はまだ途中というが、ラトビア国家警察によると、オンライン詐欺だけでも同国で少なくとも1500人が被害に遭い、被害額は約42万ユーロ(7500万円)に上るという。

「フォンファーム」も追跡対象に

各国の捜査当局が追いかける「農場」には、大量のスマートフォンの実機をまとめて動かす「フォンファーム(電話農場)」もあり、これもいわゆる「スマホ農場」だ。その犯罪への利用の一端が垣間見えたのが、カンボジアを拠点とする多国籍複合企業「プリンス・グループ」の創業者兼会長が関わっているとされる事案だった。米司法省は2025年10月に捜査に乗り出している。