イーロン・マスク氏が設立した人工知能(AI)新興企業xAIは、大規模言語モデル(LLM)を搭載した生成AIチャットボット「Grok」を発表した。Grokは、ChatGPTやGoogleのBardに対抗する製品として位置づけられており、リアルタイムの情報アクセスと独自のユーモアが特徴だ。
Grokの開発背景と特徴
xAIは2023年7月に設立され、わずか数カ月でGrokを開発した。Grokは、X(旧Twitter)のデータを活用して学習しており、リアルタイムで情報を取得できる点が強みだ。また、マスク氏は「Grokはユーモアを理解するよう設計されている」と述べており、他のAIアシスタントとは一線を画すことを目指している。
Grokという名前は、ロバート・A・ハインラインのSF小説『月は無慈悲な夜の女王』に登場する言語に由来しており、「深く理解する」という意味を持つ。xAIは、Grokが質問に対して「皮肉やユーモアを交えて回答する」と説明している。
提供開始と料金プラン
Grokは、米国時間の2023年12月初旬からXプレミアムプラス加入者向けに提供が開始される。Xプレミアムプラスは月額16ドル(日本では月額約2,000円)のサブスクリプションサービスで、広告非表示や青い認証バッジなどの特典が含まれる。マスク氏は、Xの買収後、プラットフォームの収益化を進めており、Grokの提供もその一環とみられる。
xAIは、Grokの初期バージョンは英語のみ対応だが、将来的には多言語対応を目指すとしている。また、APIの提供も計画されており、開発者がGrokを自社のアプリケーションに組み込めるようになる見通しだ。
ChatGPTとの違いと競争
Grokは、ChatGPTと比較して、より制限の少ない回答が可能だとされる。マスク氏は、ChatGPTが「ポリティカル・コレクトネスに過ぎる」と批判しており、Grokはより率直な回答を提供することを目指している。ただし、倫理的なガイドラインは設けられており、違法行為や有害なコンテンツの生成は防止される。
マスク氏は2015年にOpenAIの共同設立者の一人だったが、2018年に取締役を退任。その後、OpenAIがマイクロソフトと提携したことに反発し、xAIを設立した経緯がある。Grokの発表により、AI業界の競争はさらに激化することが予想される。
今後の展望と課題
xAIは、Grokの開発を加速させるため、大規模な計算リソースの調達を進めている。マスク氏は、テスラの自社開発AIチップ「Dojo」や、Xのデータセンターを活用する可能性を示唆している。また、xAIはテスラやXとの連携も視野に入れており、自動運転技術やソーシャルメディア分析への応用も期待される。
一方で、Grokの提供開始時期や性能については、まだ不透明な部分も多い。xAIは、Grokのベンチマーク結果を公開しておらず、ChatGPTやBardとの比較は今後の評価次第となる。また、Xプレミアムプラス加入者のみが利用できるという制約が、普及の障壁となる可能性もある。
マスク氏は、Grokが「人類の利益のために」開発されていると強調しており、AIの安全性にも配慮する方針を示している。しかし、規制当局からは、誤情報の拡散やプライバシー侵害の懸念が指摘されており、今後の対応が注目される。



