ビックカメラの広告営業チームは、約1000枠の広告媒体をわずか4人のチームで管理・運用している。デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進により、受注件数は2倍に増加し、予算も3カ月前倒しで達成するなど、大きな成果を上げている。従来はExcel管理やリードタイムの長期化が課題だったが、デジタルセールスルーム「openpage」を活用し、業務の大半をオンラインで完結できる仕組みを構築した。
1000枠の広告を4人で管理、Excelとメールに頼る非効率
ビックカメラの広告営業チームは、店舗内外の広告媒体を一元的に管理している。屋外の看板や街頭ビジョン、店内のエスカレーターラッピングやポスター、天井、壁面など、トータルで約1000枠の広告スペースを扱う。全国40~50店舗分を全て本社で一元管理し、メーカーへの営業も行っている。
主要な広告主は約300社だが、代理店や施工管理パートナーまで含めると1000社規模になる。この大規模な業務を、わずか4人のチームで回しているのが現状だ。
しかし、DXを進める以前は、業務の非効率さが深刻な問題だった。基本はExcel管理で、担当者ごとにExcelファイルがあり、統合できていなかった。チャットツールや口頭での連絡も多く、誰がいつ何を送ったかが分からない状態だったという。
リードタイム長期化で商機を逃す、競合に取られる案件も
広告営業チームの当時の課題について、ビックカメラ 営業企画部の荻下晃成氏は「メーカーから『この枠空いていますか?』と聞かれても、すぐに答えられなかった。調べ始めてから返答までに1週間くらいかかることもあった」と振り返る。
当時は1日10件ほどの問い合わせがあったが、迅速な回答ができずに滞留していた。人員も限られているため、商談につながる案件は1日1件あれば良い方だった。問い合わせ自体は来ているのに、自社の体制でさばけていなかったのだ。
また、代理店経由の案件では、競合の媒体にも同時に声がかかっているケースが多かった。ビックカメラがもたついている間に、他社に取られてしまうこともあった。空き枠がその場で分かれば即答できるが、持ち帰って確認するという対応になり、タイムラグが発生していた。
openpage代表の藤島誠氏は「リードタイムは本当に重要。早く決まるということは、それだけ営業サイクルを多く回せるということ。サイクルが回れば、その分だけ受注件数を増やせる。つまり売り上げの増加に直結する」と指摘する。
DSRツール「openpage」でデジタル完結、受注件数2倍に
こうした状況を解決するため、ビックカメラは営業DXに乗り出した。デジタルセールスルーム「openpage」を活用し、広告出稿企業や代理店向けに、広告案件の概要をまとめたWebサイトを作成。これまで担当者ごとにメールや電話で管理していた代理店やパートナー企業との進捗管理を、デジタルで完結する仕組みを構築した。
従来は、広告の空き状況などを各担当者がExcelで管理しており、問い合わせがあっても回答までに時間を要していた。また、媒体資料も一つのPDFにまとめきれる量ではなく、写真や図面、周辺環境などを含めると1ファイルに収まらず、メールで分割して送ると数十MBになって送れないこともあった。
これらの背景から、PDFやメールとは異なる形で、デジタル上で商品情報を網羅的に伝える手段を模索していた。調べていくうちにDSRというカテゴリーがあることを知り、「これはまさに自分が探していたものだ」と思ったという。
営業DXにより、営業活動の大半がオンラインで完結するようになり、受注件数は2倍、3カ月前倒しでの予算達成など、大きな成果をあげている。
「営業しなくても売れる」仕組み、案件と進捗管理の2軸で可視化
openpageの藤島氏は「日本の営業はまだまだ無駄が多く、これまでopenpageが支援してDSRに取り組んできた企業の成果を見ると、リードタイムは半減近くまで削れることが分かっている。これは見方を変えれば、営業生産性が倍になるということ」と述べている。
ビックカメラの広告営業チームは、DXによってリードタイムが短縮された分、新たな商談に入る回数が増えた。荻下氏は「まさにそうですね。現在はリードタイムが短くなった分、新しい商談に入る回数が増えました」と成果を実感している。
今回の取り組みは、日本のPM(プロジェクトマネジメント)型営業の構造的な課題を解決する一例といえる。従来の営業ツールの多くは、訪問数や架電数といった「行動量」を管理する海外発の発想で作られているが、日本のPM型営業の実態にはフィットしない。本当に必要なのは行動数の管理ではなく、顧客目線で要件定義を丁寧に実施し、進捗を滞らせないことである。
ビックカメラの広告営業チームも、典型的なPM型営業の問題を抱えていた。案件の進捗やそれにかかる確認業務が多岐にわたり、本来時間を割くべき営業活動の時間を確保できていなかった。DXにより、これらの課題を解決し、「営業しなくても売れる」仕組みを実現した。



