リコージャパンとナレッジワークが資本業務提携、AI商談記録を年内発売
リコージャパンとナレッジワークが資本業務提携

リコージャパンは8月4日、ナレッジワークとの資本業務提携を発表した。出資金額は非公開だが、持分法適用外のマイノリティ出資となる。この提携により、ナレッジワークが持つAIを活用したセールスイネーブルメント領域の製品・サービス群をリコージャパンが顧客企業に販売する。さらに、両社の人材によるSFA・CRM構築を含むシステムインテグレーションや、導入後の運用定着支援を推進し、AIを組み込んだソリューションの共同開発も検討する。

第1弾は「ナレッジワークAI商談記録 for RICOH」、kintone連携で商談データを活用

今回の第1弾として、両社は「ナレッジワークAI商談記録 for RICOH」を年内に発売する予定だ。同サービスは、リコージャパンが社内実践で培ったノウハウをもとに開発したテンプレートと「ナレッジワークAI商談記録」を組み合わせたサービスとして提供される。AIで自動文字起こしした商談音声データを「RICOH kintone Plus」とシームレスに連携させる。

「ナレッジワークAI商談記録 for RICOH」は、対面での商談や会議の内容をスマホアプリやPC向けアプリで録音し、音声解析AIで文字起こしを行う。5人参加の商談でも話者分離が正確に行えるのが特徴だ。このデータをもとに顧客課題などを抽出して要約し、SFAやCRMに商談を自動的に蓄積する。

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ナレッジワークの麻野耕司社長CEOは「AI商談記録の基本機能に加え、リコージャパンの製品、技術、ノウハウを組み合わせてアップデートした製品として提供する。特にkintoneとの連携機能は、ナレッジワークAI商談記録 for RICOHだけの専売提案となる」と述べている。

さらに、カスタマイズAIエージェントで商談記録に個別企業の営業ナレッジなどを組み合わせ、最適な商品を盛り込んだ提案書を自動作成できる。また「ナレッジワークAI営業ロープレ」を利用すると、AIが顧客役となり、作成した提案書をもとに事前練習ができる。

2030年度までに3000社導入へ、営業DXを共同展開

リコージャパンでは、社内実践で培ったノウハウを生かした提案を推進し、大手企業のほか中堅中小企業などを対象に、2030年度までに3000社への導入を計画している。

ナレッジワークは2020年4月創業のスタートアップで、営業生産性向上を実現する「セールスAIエージェント」の構築・運用を行う。具体的には、営業業務向けにカスタマイズしたソリューションを提供する「セールスAXコンサルティングシリーズ」、標準的な営業業務に対応したAIエージェントを提供する「セールスAIプロダクトシリーズ」、セールスAIエージェントの精度向上を支援する「セールスAIエージェントOSシリーズ」を展開している。

リコージャパンの笠井徹社長CEOは「当社は中期事業計画において、『サービスインテグレーター企業として、DX & GXとAIで、お客さまの成長に貢献し続ける』ことを掲げ、その実現手段の1つとして『重点領域でのストックにつながるデジタルサービスの拡大』に取り組んでいる。パートナーとのアライアンス、M&A、資本業務提携を進めている」と説明した。

今回の発表はその一環であり、自社を最初の顧客としてDX・AI活用を実践し、その成果を顧客に提供する「カスタマーゼロ」の取り組みである「DX・AIの社内実践の加速と顧客への提供」といった戦略にも沿うものだ。

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笠井氏は「ナレッジワークは、リコージャパンの営業AXに向けた社内実践を支えてきた企業であり、その実力を理解している。リコージャパンの企業理念とナレッジワークの目指すビジョンが同じであることも、資本業務提携に踏み込んだ理由の1つ。今後、両社の連携で営業にAIを実装し、営業AXを伴走型で提供していくことができる。両社の技術を生かした新たなソリューションの開発にも取り組む。リコージャパンが推進するDXエコシステムの一員に加わってもらう」と述べた。

また、ナレッジワークの麻野氏は「約200人の社員のうち、半数以上がAIエンジニアをはじめとする開発メンバーであり、創業以来、独自の技術力を生かした開発に注力してきた。営業担当は約20人にとどまる。製品の実力が向上し、より多くのお客さまに届けたいと考え、リコージャパンとの資本業務提携を決定した。販売だけでなく、製品の開発協力にも踏み込んだ連携になる。今回の資本業務提携により、AIを活用した営業DXを世の中に届けていく挑戦をリコージャパンとともに推進する」とした。

AI商談記録を軸に3つの提案、kintoneやSFA・CRM連携で営業AXを支援

リコージャパンでは、AI商談記録を利用した展開として、3つの取り組みをナレッジワークと連携して進める。すでに2026年5月から営業活動を開始しており、7月末時点での1週間あたりの案件化数は100件を超え、6月初頭に比べて2.4倍に増加している。

1つ目は、アプリの単体提案だ。AI商談記録や文字起こしツール「toruno」を活用し、商談や会議記録を効率化しながら蓄積し、内容の要約や案件抽出に利用する。これを営業AXの入口と定義している。

2つ目は、中堅中小企業向けのkintoneとの連携提案だ。AI商談記録とkintoneを組み合わせることで、AI商談記録で収集した商談時の事実データをkintoneに蓄積し、営業部門の活動支援に生かす。またSFA・CRMとの連携を図ることで、営業情報を組織全体で管理できる。これらの成果は、リコージャパン独自のスクラムパッケージとして提案することも視野に入れている。

3つ目は、大手企業や中堅企業向けのコンサルティング、SFAとの連携提案だ。AI商談記録の提案とともに、既存のSFA・CRMに商談データを接続し、活用を高度化。情報の社内共有やAIによる営業ロールプレイングの実施、AIによる商談支援などにつなげる。

笠井氏は「商談記録や議事録作成に時間がかかっていたり、営業活動が属人化していたり、営業ノウハウが組織に蓄積されていなかったり、商談データを十分に活用できていないというお客さまが多い。AI商談記録を導入したある卸売業では、こうした課題の解決を図ることができている」とした。

AI商談記録の導入により、現場における入力負荷ゼロが実現し、基幹システムとの連携、AI活用を通じて、営業組織全体の生産性を最大化する「営業AX」を実現できるとしている。

社内実践で課題抽出精度が9%から71%に向上

今回の説明会では、リコージャパンでの社内実践の成果にも触れた。リコージャパンは2023年から「営業プロセス改革」を推進。「モノ売り営業」から「課題解決型営業」へのシフトを目指し、ナレッジポータル刷新プロジェクトを推進するとともに、SFA・CRMの刷新を同時に実行してきた。

笠井氏は「まずは散在していた約7000件のナレッジを一元管理し、営業部門が必要な資料を検索できるだけでなく、SFAやCRMの商談、購買履歴、活動コメントをAIが解析し、商談状況に応じて、AIが最適な資料を自動レコメンドできるようにした」という。さらに2025年には、顧客の課題解決策を提示できるように進化させた。

しかし、ここで大きな課題が発生した。社内に蓄積した1000万件の活動報告データを最新AIで分析しても、顧客の課題の抽出精度はわずか9%にとどまったのだ。同氏は「この結果に愕然とした。何か手を打たなくてはならないと考えた」と振り返る。課題は活動報告データの品質にあった。営業報告書には、上司などとの対話に必要な項目だけを記載する仕組みとなっていたため、AIが分析して課題を抽出するには情報が足りなかった。

その解決策として、2026年4月後半からナレッジワークのAI商談記録を採用し、顧客接点にいる約6000人の営業社員に展開。手入力をなくし、生の対話をそのままデータに変えることができるようにした。

笠井氏は「6月末までに18万件の商談記録を蓄積した。その結果、顧客接点での対話内容がAIで活用できるデータへと変わり、会社の重要な資産となった。顧客課題の抽出精度が劇的に高まり、営業社員も報告書を書く手間から解放されるというメリットも生まれた」と成果を示した。

1商談あたりの報告書の文字数は、平均73文字から平均1340字へと約18倍に増え、顧客課題の抽出率は9%から71%に大幅に改善した。課題抽出件数は、SFAを刷新した2025年2月時点の約1万件から、2026年2月には約2万2000件に増加。さらにAI商談記録の活用により、2026年6月には約4万5000件に達した。約1年4カ月で4.5倍に拡大したことになる。同氏は「お客さまの課題解決に貢献できる体制が整った」としている。

また、同氏は「お客さまを訪問したときに、AI商談記録の仕組みを説明し、データ化のために商談内容を録音することについて許可を求めている。これは、毎日6000人の営業社員がお客さまの前でAI商談記録のデモンストレーションを行っているのと同じである。お客さまの関心が高まっている理由の1つ」という効果を口にする。

しかし、社内実践の取り組みは道半ばだと笠井氏は語る。同氏は「社内実践は、新たな次元に入ることになる。営業プロセスを変革し、営業の能力を拡張する。また、リアルタイムで把握することで、次のサービス提供につなげることも目指す。サービス提供のプロセスも変えていきたい」と意欲を見せている。

具体的には、蓄積した商談データをもとに、AIアシスタントが営業活動の次の一手を提案。AIが顧客訪問の約束を確認したり、提案書の原案を自動作成したり、訪問時のヒアリング項目を自動作成したりといったことを可能にするという。加えて、AIを相手に訪問前の事前練習を行う活用も想定している。