「JX Live!2026」でAI社会の光と影を議論、日本の勝ち筋は「現場力」
「JX Live!2026」AI社会の光と影、日本の勝ち筋は現場力

新経済連盟主催の「JX Live!2026」が7月28日、東京・虎ノ門ヒルズ「TOKYO NODE」で開催された。「JX(Japan Transformation)」をテーマに、政治・経済のリーダーが日本の未来を議論するイベントで、最終セッションとして「AI社会のリアリズム~世界中で野心が激突する今、日本の未来を開くには~」が行われた。

登壇者は、PKSHA Technology代表の上野山勝也氏、参議院議員の安野貴博氏、楽天グループ専務執行役員のティン・ツァイ氏、博報堂DYホールディングス執行役員の森正弥氏。モデレーターは新経済連盟政策部長の片岡康子氏が務めた。

AIがもたらす「光」:創造性の拡張と合意形成の可能性

セッションではまず、AIが社会にもたらす「光」の側面について議論が交わされた。上野山氏は、AIを「未解決の問題を解く手段」と位置づけ、「クレジットカードの不正検知では、人間には不可能なコンマ1秒の速さで犯罪を見抜くことができます。また、孤独に寄り添う相談窓口など、人と人との繋がりをデザインする領域でもAIを役立てています」と説明した。

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安野氏はAI革命を「産業革命級かそれ以上のもの」と表現し、「AIはコミュニケーションの問題を解決するんじゃないか」と期待を寄せた。「衝突を未然に防ぎ、多くの人たちの知恵を集めながら意思決定していく。この合意形成がAIによってスケールフリーになる。1億2000万人での合意形成、もしくは80億人で合意形成できるような新しい情報の流れ方が実現できるのではないか」と語った。

森氏は、人間の主体性、創造性を高めるAIの使い方が重要だと訴える。「従業員の持っているノウハウや暗黙知を、いかにAIを使って高めていくか。創造性のスケールは個人に留まらず、組織やコミュニティ、国家としての新しいビジネス、新しい社会価値を実現していくかが大事」と述べた。ティン・ツァイ氏も「私たちはAIが人間の創造性に取って代わるとは考えていません。むしろ、人間が自らの創造性を解き放つための強力な手段であると考えています」と話し、AIが人間の能力を引き出せる可能性を示した。

「影」の部分:AI依存による人間の成長への警鐘

一方、AI依存で人間の成長が損なわれるという「影」の部分については、厳しい意見が相次いだ。上野山氏は、社内でAIの利用を試験的に禁止したチームで成長性が高まった事例を紹介。「AIは能力の拡張器です。好奇心が強ければ学びを加速させますが、一方で『怠けたい』という心も拡張してしまいます。レポートを5秒で終わらせてしまうような『サボり癖』の拡張をどう扱うか、初等教育を含め非常に試されています」と警鐘を鳴らした。

森氏も「AIを使っていくと人間チームの生産性や認知的な努力が失われていくという研究結果が多数出ている」と報告。AIに思考を委ねすぎる状態を「AI浅慮」と呼び、「AIが網羅的なアウトプットを出すと、人間が検討を止めてしまう。『AIを使うことで人はバカになる』という凄まじい現象が報告されている」と危機感を示した。さらに「AIは汎用的な視点に立っているからこそ、個別の事情には対応できません。人間がAIに対して独自の視点を与えていく役割を忘れてはいけません」と訴えた。

雇用への影響については、安野氏が米国の状況を紹介。「エントリーレベルの仕事が16%ほど減っているという話がある。知的労働におけるジュニアレベルの経験を積む場がなくなっている」と指摘。日本では各業界ごとに「人手不足とAI失業がモザイク状に存在するようになる」とし、「職業訓練のあり方を変え、いきなり起こりうる雇用のスパイクを定点観測する統計などの制度設計」が必要だと提言した。

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日本の強みは「現場力」、AI時代に再評価

AI競争が激化する中、日本はどこに強みを見い出せるのか。森氏は「フィジカルAI」に可能性があると語り、「製造業などの現場にあるノウハウや暗黙知をAIに組み合わせる。日本は労働生産人口がすごく減っており、課題先進国として少子高齢化を突破していくというのは、グローバルでプレゼンスを発揮していくうえでも非常に大事」とした。

安野氏は「日本の強みは現場力の高さ」と定義し、「IT革命以降、中央から与えられたソフトウェアにワークフローを合わせたほうが生産性は高く、現場の創意工夫は邪魔になっていました。でも、AI時代には高いITリテラシーがなくても、現場の人がAIを通じて自ら仕組みを作れるようになる。すると、また高い現場能力が生きる時代が来るのではないか」と述べた。

イベント終盤、上野山氏はAIにはない人間の「情動」にこそ、社会を動かす力があると強調し、「AIは正解のある領域の天才ですが、世界を生成しているのは人のモチベーションや情動。どのような形にAIをデザインするかは、私たちが持つ負の感情を増幅させるのではなく、ポジティブな側面をいかにエンパワーするかにかかっています。この10年、20年でポジティブなものをみんなで作っていきたいですね」と締めくくった。