金利上昇を背景に国債や定期預金が安全資産として見直される一方、投資信託や株式、不動産も視野に入れ、投資判断に迷う人が増えている。投資セミナーが活況を呈する中、AIに分析を頼る動きも広がる。そんな時代に求められる投資リテラシーを探るため、セミナーを訪ねた。
「リサーチに使う」国山ハセン氏のAI活用法
10月2日、東京都内でセミナー「AI時代の投資リテラシー」が開かれた。主催は不動産投資を中心に資産形成の支援を行うプロパティエージェント(東京)で、元TBSアナウンサーの国山ハセンさんが登壇した。国山さんは動画配信事業を手掛ける一方で、投資家でもある。
自身の投資へのAI活用について「金利上昇など世の中の状況が目まぐるしく変わる中、ニュースの理解を深めるためのリサーチに使っている。個別銘柄の深掘りや自身の資産配分を見直す際に利用するケースもある」と説明した。
かつてはAIに「上昇する銘柄」を質問したこともあったという。しかし、教えられた銘柄を買うと「次の日に下落してショックを受けた」。その後に反発したので買い増したが、それ以降、想定に反して買値より大幅に下落する「塩漬け状態」になってしまったという。
AIに売買の判断を委ねた結果「株価の乱高下に一喜一憂してしまった。もっと銘柄について自分で調べたほうがよいと実感し、最終的な意思決定は人間がしたほうがよいと思った。投資には自分の明確な根拠が必要だ」と振り返った。
AIはあくまで「提案」、約7割が活用意向
国山さんのように投資のリサーチにAIを活用するケースは少なくない。プロパティエージェントが7月に投資経験者545人を対象に実施した調査では、およそ3人に1人が投資判断の参考情報源として「利用している」と回答。今後の意向についても約7割が「活用したい」と前向きに捉えていた。一方、約5割が「誤った情報を信じてしまう」と不安感も示した。
AIの情報に誤りが生じる理由について、電通グループで国内のAI戦略を主導する並河進さんは「AIが引用する情報には古いデータや間違っているデータが混ざっている場合がある」と指摘する。その上で「AIが示すのは提案に過ぎない。複数の案を出させて比較し、根拠を提示させて確かめることが重要だ」と強調した。
参加した東京都杉並区の20代の女性会社員は「最終的な判断は自分で行おうと実感した」と語った。
若者向け講座も人気、基礎知識の重要性
若者向けの講座も人気だ。「新宿わかものハローワーク」は就職支援の一環として、今年度から金融経済教育推進機構(J-FLEC)講師の中山俊治さんによる講座「社会人として知っておきたいお金の話」を定期開催している。毎回すぐに満席になるという。
8月の講座では中山さんが預貯金、株式、債券、投資信託を比較。安全性と収益性、流動性の3つの観点から金融商品の特徴を示した。その上で「ローリスクでハイリターンな商品は存在しない」と注意を促した。さらに「リスクを抑えるためには債券や株式など特徴の異なる複数の資産を組み合わせる分散投資の視点が欠かせない」と強調。一定額を定期的に購入することで価格の急騰や急落の影響を和らげる積立投資や、継続的な投資で安定的な成果を得る長期投資も紹介した。
AIツールを助言役として活用しつつ、基礎的な金融知識を蓄えて、自らの意思で判断を下す。技術がどれほど進化しても、最後にリスクと向き合うのは自分自身にほかならない。