創業105年を数える老舗メーカーが、AIを活用した融資審査の効率化により、これまで難しかった少額融資の調達に成功している。AI時代の「カネを貸す」条件が変わりつつある。
中小企業の資金調達の壁
大企業と比較して、中小企業やスタートアップは資金調達において直面するハードルが高い。この問題の背景には、大企業と中小企業の間で、金融機関が判断できる経営情報の量や質に差がある「情報の非対称性」が指摘されている。
上場企業などでは四半期ごとに第三者監査を受けた決算を発表するケースが多い一方、中小企業の決算は年に1回に限られ、監査を受けていないケースも少なくない。決算書の頻度や精度が大企業より低くなりやすいため、銀行は企業の実態を判断しづらい。
老舗メーカーの事例
そう語るのは、創業105年の老舗メーカーである。同社は、売り上げが伸びるほど資金繰りが苦しくなるという課題を抱えてきた。原材料の仕入れ先には1ヶ月以内に支払いをしなければならない一方、納品先である大手企業からの入金は2ヶ月後。受注量が増えて売り上げが急激に上がる時ほど、たくさん原材料を仕入れなければならず、必要な資金も増える。
「この『入金までの1ヶ月のズレ』をどう乗り越えるのか、資金繰りが大変になる」と社長は語る。さらに、手作り弁当ならではの突発的な支出も追い打ちをかける。弁当の製造機器の多くは特注品で、リース契約が組めないものも少なくない。機器が故障した際や、供給年限が終了する修理用部品の確保には、突発的に数万円から数十万円の現金が必要になることもある。
しかし、銀行融資では「50万円から200万円という少額」や「修理代などの急な支払いに間に合うスピード」での調達は難しいのが現実だ。
AIによる融資審査の変化
金融庁の調査によれば、既存融資において個人保証を提供している中堅・中小企業の割合は49.5%に上り、企業規模が小さいほどその割合は高い傾向にある。経営者個人の資産を担保にしなければ融資を受けにくい——この構造的なハードルは依然として存在する。
さらに、中小企業への融資は大手企業と比較して少額であるケースも多く、少額融資は審査や事務手続きにかかるコストに対して収益性を確保しにくい。そのため、金融機関にとっては対応が難しい領域とされてきた。
しかし、AIの活用によってこの状況に変化が現れつつある。AIやデータの活用により、金融機関の融資や与信判断の在り方が変化し始めている。従来は融資を受けにくかった中小企業やスタートアップが、資金調達しやすい環境が整い始めた。



