ソフトバンクは2026年7月19日、NVIDIAとの協業を強化し、人工知能(AI)を活用したネットワーク自動制御技術の開発を発表した。この取り組みは、AI-RAN(AI-無線アクセスネットワーク)の商用化を2027年度までに実現することを目標としている。
AI-RANとは何か
AI-RANは、無線アクセスネットワーク(RAN)にAI技術を統合し、トラフィック状況やユーザーの動きに応じて無線リソースを動的に最適化する仕組みだ。従来のRANでは、基地局のパラメータ調整や干渉制御は人手や固定ルールに依存していたが、AI-RANでは機械学習モデルがリアルタイムで最適な設定を自動実行する。これにより、通信品質の向上と運用コストの削減が期待される。
ソフトバンクは、NVIDIAのGPUアクセラレーテッドコンピューティングプラットフォームを活用し、AIモデルのトレーニングと推論を高速化する。具体的には、NVIDIAのA100やH100 Tensor Core GPUをデータセンターに導入し、基地局からのデータを集約して学習させる。また、エッジ側ではNVIDIA Jetsonシリーズを用いて、低遅延な推論を実現する。
協業の詳細とスケジュール
ソフトバンクとNVIDIAは、2025年からAI-RANの共同研究を開始しており、今回の発表はその成果を基にした実用化フェーズへの移行を意味する。両社は、2027年度までにAI-RANを商用ネットワークに導入し、まずは都市部の高トラフィックエリアから展開する計画だ。その後、2028年度までに全国展開を目指す。
ソフトバンクの代表取締役社長兼CEOである宮川潤一氏は、「AI-RANは5Gの次のステージを切り拓く技術だ。NVIDIAとの協業により、AI時代のインフラをリードしていく」とコメントしている。一方、NVIDIAの創業者兼CEOであるジェンスン・フアン氏は、「ソフトバンクとの協業で、AIをネットワークの中核に据えるビジョンを実現できる。これは通信業界の変革の始まりだ」と述べた。
通信業界への影響
AI-RANの商用化は、通信事業者にとって大きなメリットをもたらす。例えば、トラフィック需要の変動に応じて無線リソースを動的に割り当てることで、ピーク時の輻輳を緩和し、ユーザー体験を向上させる。また、AIによる障害予測や自動復旧機能により、ネットワークの可用性が高まる。ソフトバンクは、AI-RANの導入により、運用効率を最大30%向上させることを見込んでいる。
さらに、AI-RANは新たなビジネスチャンスも創出する。例えば、自動運転や遠隔医療、スマートシティなどのアプリケーションでは、超低遅延かつ高信頼な通信が求められる。AI-RANはこれらの要求に応える基盤となる。ソフトバンクは、APIを公開し、サードパーティの開発者がAI-RANの機能を活用したサービスを構築できるようにする計画だ。
競合他社の動向
AI-RANの開発競争は世界的に激化している。米国のベライゾンは、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)と協業し、クラウドベースのRANを推進している。また、中国の華為技術(ファーウェイ)は、自社開発のAIチップを用いたRANソリューションを提供している。ソフトバンクは、NVIDIAとの強固なパートナーシップと、日本国内での豊富な5G運用実績を武器に、差別化を図る。
日本国内では、NTTドコモやKDDIもAIを活用したネットワーク最適化に取り組んでいるが、ソフトバンクはNVIDIAとの協業で先行する。特に、GPUの性能を活かした大規模なAIモデルの学習能力は、他社に対する優位性となる。
今後の展望
ソフトバンクは、AI-RANの商用化を皮切りに、AIを活用したネットワークの完全自動化を目指す。2028年までには、ネットワークの設計、構築、運用、最適化の全プロセスにAIを適用する「AIネイティブネットワーク」の実現を目標に掲げている。これにより、通信業界の労働力不足問題の解決や、さらなるコスト削減が期待される。
また、ソフトバンクはNVIDIAとともに、AI-RANの標準化活動にも積極的に参加する。3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)などの国際標準化団体において、AI-RANの技術仕様を提案し、業界全体の普及を促進する方針だ。



