NTTドコモ、2027年度中に「5Gエリア=SA対応エリア」目指す 体感品質の向上を重視
ドコモ、2027年度中に5Gエリア全般をSA対応へ 体感品質向上を重視

NTTドコモの通信品質改善は、ここ数年の課題となっている。コロナ禍が明けた2023年以降、トラフィックの急増やエリア変動への対策が追い付かず、「つながりにくい」という不満の声が急増した。ドコモはこの3年、人口が集中するエリアの対策強化や基地局のチューニングを行い、体感品質の向上に努めてきた。

2026年度第1四半期の進捗と今後の計画

2026年9月時点で、ドコモの対策はどの程度進んでいるのか。同社常務執行役員 ネットワーク本部長の引田荘太郎氏が、通信品質向上に向けた進捗や今後の取り組みについて説明した。

ドコモは2026年度第1四半期にて、2500局の基地局工事を完了させ、このうち5G基地局は1500局に上る。引田氏は「2025年の下期(6カ月分)相当の基地局工事を3カ月で終えており、工事のスピードアップを図っている」と説明する。また、基地局の設備容量は、基地局数、セクター数(カバーする角度や方向)、帯域幅で決まるが、5G基地局の設備容量は、2025年度と比較して全国で2倍に増量した。

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なお、2026年度第1四半期の決算説明で、2026年度の計画に対して基地局の竣工スピードが目標を下回っていることが明らかになった。その理由について引田氏は「特定の部材を調達できなかった」ことを挙げる。現在、部材の供給問題は解消しており、「年度末に計画していた数は達成できる見込み」とのこと。2026年度末に5G基地局を1万局増設する予定としている。

5G SAエリアの拡大と3G停波に伴う周波数転用

ドコモは東関東(1都3県)や大阪、名古屋などの都市部にリソースを集中させることで、ユーザーの体感品質向上を図っている。

5G SA(スタンドアロン)エリアの拡大も進めており、「年度末まではある程度SAを使えるエリアが広がる」と引田氏。5G SAの対応はKDDIやソフトバンクから後れを取っているが、その理由について同氏は「初期に導入した5G設備の中に、構造上SAに対応できない装置が含まれていたこと」を挙げる。「現在はそれら旧型装置の置き換えを急ピッチで進めている。2027年度中には『5Gエリア=SA対応エリア』となる状態を目指している」とした。

旧3Gサービス(FOMA)終了に伴う800MHz帯の4Gへの転用も進行中だ。2026年度第1四半期にほぼ転用は完了しており、800MHz帯の帯域幅を1.5倍に拡張したことで「混雑していた場所の約8割に対処できた」という。

体感品質の重視とトラフィック増加への対応

ドコモが重視する指標の1つが「体感品質」だ。SNSでの声やアプリの遅延時間、現地調査データなどを用い、体感品質を分析している。

そんな中でトラフィックは年率1.2倍のペースで増加を続けているが、主要都市部での増加量が特に大きい。ドコモは主要都市部の人が集まる場所として、全国253箇所を重点ポイントに設定し、品質改善を実施。引田氏は「8月時点でほぼ全ての場所において、最も混雑する時間帯でも下り100Mbps以上を出せる状態になっている」と成果を語る。

鉄道沿線の品質向上にも力を入れており、山手線や大阪環状線などの主要路線で動画が快適に視聴できる割合が増えているという。主要59路線での調査では、快適に視聴できる割合が80%を超える路線が拡大しているという。その数は8月に29路線に広がり、2026年度末までに39路線を目標に掲げる。ただし「快適」の基準は「HD動画を3Mbps以上で視聴できること」としており、5Gの通信速度としては物足りない印象も残る。

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ドコモが考える「快適な通信」とは、100Mbpsなどの高スループットだけを見るのではなく、3Mbpsなど一定の速度が常に出ているかという点も評価しているという。「移動中のモビリティ制御が正しく機能し、通信が継続できているかを重視している」(引田氏)

具体的な改善事例と今後の技術導入

個別の改善事例も紹介した。大阪駅北動線東側交差点では、周辺基地局の運用を改善することで、スループットが42Mbpsから191Mbpsに向上した。また、最新型のMMU(Massive MIMO Unit)を駅の近隣に設置したところ、新宿駅では0.2Mbpsから317Mbpsに、渋谷駅では0.7Mbpsから171Mbpsに改善。これら2駅は「ブラウジングもできないほどの速度だった」が、Massive MIMOによって解消できた。

引田氏は、2026年度に入って上りのトラフィックが1.2倍に増加していることにも触れる。大規模イベント時には動画のアップロードやSNSへの投稿などにより、上り通信の需要も高まっている。

さらに、今後の生成AIやAIエージェントの普及に伴い、モバイル通信における上りトラフィックが爆発的に増加する可能性も示唆する。エリクソンのレポートによると、AI利用が拡大した場合、5年間で上りトラフィックが3倍以上に膨れ上がる予測もある。「モバイルの上りトラフィック増加量もしっかり見ておかないと、将来的に対応できなくなる」と引田氏は懸念を示した。

新技術として、最新の「Tri-Band Massive MIMO」を大阪の音楽イベントに導入し、下り2.8Gbps、上り93Mbpsの通信速度を実現した。さらに、AIを活用してネットワークパラメーターを動的に最適化する「MantaRay SON」技術を、複数基地局をまとめたクラスタ単位で適用する取り組みも8月に開始した。混雑している基地局にリソースを自動配分することでも通信品質の向上に努めている。