周南市を拠点とする社会人硬式野球クラブ「三和テクノイノベーション」が、関東で8月8日から行われる「第50回全日本クラブ野球選手権大会」に初出場する。「ノーサイン野球」の生みの親として知られる中野泰造監督(71)の指導を受け、チームは結成からわずか1年で出場権を勝ち取った。選手たちはクラブ日本一を目指す。
7月25日、岩国市の岩国工業高グラウンドで行われた同校との練習試合。二回、走者一塁の場面で、中野監督は「見ていてください。彼、走りますよ」とつぶやいた。その直後、走者は走り出した。ややスタートが遅れたのを見た打者の金谷温宜主将(25)は、とっさに空振りし、盗塁を手助けした。サインは出ていない。選手それぞれが、今何をすべきかを考え、動いた結果だった。
「ノーサイン野球」の実践
中野監督は1991年に東亜大(下関市)の野球部の監督に就任し、サインなしで自ら考えて動く「ノーサイン野球」を採り入れ、わずか3年半で同部を全国大会優勝に導いた実績を持つ。今のチームでもそのスタイルを実践する。選手が自分たちで考え、動く野球だ。そのためには、あらゆる状況で最適な行動を起こす判断力、対応力が求められる。指導や練習では特にその点が意識され、その土台となる仲間の意図をくみとるチームワークも重視される。
チーム結成の背景
チームは昨年、野球経験者が社会に出ても野球を続けられる環境を作ろうと、地元・南陽工高出身の原田裕一社長を中心に結成された。勤め先や年齢に制限はなく、中野監督の指導を受けた経験がある和歌山大(和歌山県)や東亜大の出身者らが中心に集った。今年は、中野監督がオーストラリアの野球クラブチームを視察した際に声をかけたジェット・クロヘシー選手(21)や、広島工業大へ通う窪田凱斗選手(19)らも中野監督の指導を求めて参加している。
寮で中野監督と生活を共にするクロヘシー選手は「知識、人間性が素晴らしい指導者だ」と監督を慕っており、日本語が十分に話せない中でもノーサイン野球に適応し、チームの主砲として活躍している。
全国大会へ
チームは同選手権大会の中国地区予選で1位となり、大会への出場を決めた。岩国工業高との練習試合では、走者を進塁させるプレーを徹底して確認し、確実に1点を取る意識付けを繰り返した。金谷主将は「まずはクラブ日本一を目指す。一人ひとりが人間性を磨き、ノーサイン野球で粘り強く戦っていく」と意気込みを語った。



