「サッカー大国」フランスの中学生を中心とする野球クラブチームが来日し、8月1、2日の両日、東京の中学生の二つのクラブチームと江東区で合同練習を行った。フランスの少年野球チームが単独で日本チームと練習するのはまれで、その様子に密着した。
パリのクラブチームが来日
来日したのは「パリ・ユニバーシティー・クラブ」(Paris University Club、以下PUC)の野球部門に属する中学生10人と高校生3人の計13人。コーチ兼任の高校生が1人「我慢できなくて」参加する一幕もあった。受け入れたのは江東リトルシニア(江東区)と江戸川北リトルシニア(江戸川区)の両チーム。
合同練習のきっかけは、昨年の夏にさかのぼる。PUCのメンバーで日本人の母を持つルーク・ダルマーン選手(15)が、日本滞在中に野球の練習場所を探していた。しかし、野球大国日本でも、チームに属さない少年が安価で硬式野球の練習ができる場所は多くない。
ルーク選手は母の知人を通じて、江戸北リトルシニアの堀江康之事務局長に相談。昨年の夏、江戸北の練習に参加し、日本流の練習体験をフランスに持ち帰った。フランスではマイナー競技の野球に取り組むチームには、アメリカやオーストラリアにルーツを持つ選手たちがいる。世界大会で活躍する日本の練習方法に興味を持ったチームメートの後押しもあり、合同練習が実現に向かった。
花火大会という障害
しかし、問題が生じた。日程は決まったが、8月1日は江戸川区と千葉県松戸市の花火大会が行われることがわかった。江戸北グラウンドのある江戸川河川敷周辺は交通規制が入り、大混雑が予想され、PUCの宿舎からの移動が難しいと思われた。
そこで堀江事務局長が相談を持ちかけたのが、近隣の江東リトルシニアの平岡勝美会長。ふだんはライバルだが、趣旨に賛同した江東リトルシニアが、自分たちのグラウンドでやろうと助け舟を出した。運営には両チームの父母会の協力を得て、日仏野球の「草の根交流」が実現した。
練習と試合で交流
初日はキャッチボールやノックなどの合同練習をこなし、合間にヨーヨー釣りやかき氷、スイカの丸かじりなどの縁日を疑似体験。最初はぎこちなかった日仏の少年たちも、次第に打ち解けて、片言の英語や練習してきたフランス語や日本語でコミュニケーションをとっていた。
2日目はPUC対江東、PUC対江戸川北で練習試合(5イニング制)を行った。試合開始前、PUCの選手たちは、フランスではやらないというホームベース付近でのあいさつに戸惑いを見せたが、試合が始まれば手ごわかった。ヒットを打てば喜び、アウトになれば悔しがり、感情をあらわにしたプレーで躍動した。
中学3年生主体の江東には、最速130キロを超える投手もいる「オーバーエイジ枠」の高校生の活躍もあり、7-5で競り勝ち、中学2年生主体の江戸川北には5-4の逆転サヨナラ勝ちで2連勝した。
選手たちの感想
PUCのアレックス・スーリエ監督は「野球は野球。あまり日仏の違いは感じなかったが、日本チームは秩序ただしく、我々は感情を表に出してプレーしていた。それが我々だ」と振り返った。ルーク選手は「(江戸北戦で)年下の選手たちと接戦になってしまい、フランスの野球は遅れているなと感じた。でも、フランスでは公式戦ばかりで、あまり練習試合というのをやらないので、フレンドリーにできて楽しかった」と話した。
オーストラリアのチームとの対戦経験がある江東の西村一玖選手(14)は「フランスの選手はでっかいなと。バッティングもめちゃくちゃ飛ばす印象。ピッチャーの球も速くて、強かった。フランスといえばサッカーのイメージだっけど、変わりました。できればもう一度やり、次はやりかえしたい」と語った。
合同練習終了後、すっかり打ち解けた日仏の選手たちは、ハグして写真を取り合ったり、記念品を交換したりして別れを惜しんだ。PUCのエタン・スーリエ選手は「日本の練習は長くて、暑かったが、普段と違うチームとやれて楽しかった。試合ではダブルプレーを決められてうれしかった」と語り、江東の半田志錬選手(14)は「フランスは強いイメージなくて、大人はフランスではマイナー競技といっていたけど、そんなことなくて、驚きが一番大きかった。でも言語の壁とかあっても、野球をやっていれば、片言の言葉やジェスチャーでつながれる。ということも感じた」と感慨深そうだった。
江戸北の蔭山幹大主将(13)は「めっちゃ楽しかったです。いい試合ができてよかったなと思う。ほかの国のチームと試合をするのは初めてだったが、野球を含めて日本の文化を伝えられたのではないかと思う」と総括した。わずか2日間ではあったが、手作りの日仏交流体験は、両国の野球少年の心に深く刻まれたに違いない。



