広島東洋カープの試合は終盤に大きな見せ場が訪れる。「代走のスペシャリスト」がいるからだ。現役ドラフトで今季、東北楽天ゴールデンイーグルスから加入した辰見鴻之介選手(25)。ほぼ代走での出場ながら、4日現在、セントラル・リーグ3位の26盗塁をマークしている。(広島総局 中村孝)
終盤の見せ場で輝くスピードスター
球場の注目を一身に集め、相手バッテリーの警戒網をかいくぐって次の塁を陥れる。1メートル76、67キロの痩身のスピードスターは、ひりひりする場面ほど輝きを放つ。
8月20日、広島市南区の本拠地・マツダスタジアムで行われた中日ドラゴンズ戦。2―1でカープがサヨナラ勝ちを収めたこの試合は、辰見選手がヒーローとなった。1―1の九回裏に代走で出場。相手バッテリーの気を散らして二つのミス(捕逸と暴投)を引き出し、サヨナラのホームを踏んだ。盗塁こそ記録しなかったが、辰見選手の足がもぎ取った決勝点だった。
失敗を恐れないプラス思考
もちろん、大事な場面での失敗もある。それでもプラス思考を貫いてきた。「失敗でも成功でも、スタートを切らないと結果は出ない。失敗の方が学びも多くある。『行ったから失敗できた』という捉え方もできる。未来のためにやっている」と言い切る。
25歳という若さながら、含蓄のある言葉が多い。ある時は「(首脳陣への)アピールになるかどうかを決めるのは自分ではない。僕は、僕のやれることしか見せられない。しっかり毎日準備して、全力を出し切る」と言い、またある時は「(野球は)むやみに行けば、アウトになるように作られているスポーツ。スタートを切るための材料がないとセーフにはなれない。一つでも見つけられるように準備はしっかり入念に」と語る。
力の源泉は読書と吉田松陰の教え
その力の源泉は、学生時代からの読書習慣にある。「毎日、何かしらの本を読むようにしている」といい、様々なジャンルに目を通す。
体を整え、心を静め、眠る前に必ず手にするのが、幕末の思想家・吉田松陰の言葉を紹介する本だ。行動することの重要性や、挑戦した上での失敗を恥じる必要はないと説いた松蔭の教えを胸に刻み続けてきた。
武士のごとく、けれん味なく、哲学者のように思考を突き詰め、プロ野球という闘いの舞台に挑んでいる。



