第108回全国高校野球選手権大会に初出場して快進撃を続ける有明(熊本)を、10年前の熊本地震を思い出しながら見守る少年野球の指導者がいる。畑を整備したグラウンドで実田聡志主将(3年)を育んだ清水亮宏さん(51)だ。厳しい環境から「泥臭さや粘り強さが養われた」と話し、18日は有明の準々決勝突破を願い、熊本から声援を送る。
地震で練習拠点が使えず、畑を整備
熊本県西原村在住の清水さんは、地元の「西原村学童野球クラブ」で約13年前から監督を務め、現在は総監督。2016年4月の熊本地震の際、同クラブが練習拠点とする村民グラウンドが災害廃棄物の集積場となった。各地を転々としていたが、見かねたある選手の祖父が「うちの畑を使って」と申し出た。
清水さんらが重機でならし、竹に網を張って打撃練習用のネットも整備。夏前に縦120メートル、横60メートルの「畑グラウンド」が完成した。翌17年に小学3年の実田主将が入団。畑グラウンドは土が軟らかく、雨が降ると泥だらけになったが、選手たちは生き生きとプレーした。18年12月に村民グラウンドが再び使えるようになるまで駆け回った場所を、実田主将は「いま考えると、色んな人に支えられていたんだなと感じる」と振り返る。
恩師が見守る成長
清水さんは小学卒業まで指導。その後は関わりが薄れていたが、教え子が甲子園出場をつかむ姿を見ようと今夏の熊本大会決勝を観戦した。打席に入る実田主将と一瞬目が合って手を振ると、笑顔が返ってきた。
今回の地震で清水さん自身に大きな被害はなく、有明が3試合連続の逆転勝ちで8強入りを決めた16日の3回戦を甲子園球場で応援。実田主将に甲子園での安打はまだ出ていないが、守備で奮闘しつつ、リーダーとしてチームを引っ張る姿に「昔はやんちゃだったのに成長したな」と感慨に浸った。試合後にはSNSで「聡志らしいスイングで頑張れ。ここまで来たら楽しむだけ。顔が暗いぞ」と気遣うメッセージを送ると、「了解」と返信があった。
恩返しへの誓い
熊本が再び被災する中、畑グラウンドで支えられた実田主将は「こうして野球ができるのは当たり前じゃない。被災された方々に勇気を届けたい」と恩返しを誓う。テレビ観戦する予定の清水さんは「一生懸命やる姿が、結果として熊本を勇気づける。あまり重荷を背負わずに頑張って」と背中を押す。



