NIE全国大会広島大会(日本新聞協会主催)が7月30、31の両日、広島市で開かれた。分科会で公開された広島市立竹屋小学校、三原市立第五中学校、広島県立呉三津田高校の授業と、私立盈進中学校(福山市)の実践授業発表の計4つを紹介する。
ウェルビーイングを取材して理解広げる(広島市立竹屋小)
繁華街を学区とし、外国にルーツのある児童も多く通う広島市立竹屋小の5年生は、みんなが幸せに生きるためにウェルビーイング(WB)を学んできた。公開授業では、訪れた全国の老若男女に「WBな町とは」を取材。似た考えだけでなく、想定しなかった答えなどに出合って、WBへの考えを広げた。
WBとは、身体的、精神的、社会的のいずれにおいても良好な状態。同小では、校訓『きょうも げんきで みんな なかよく』とも通ずるこの概念に基づき、地元を幸せいっぱいにしようというプロジェクトを進めている。
児童らは授業を見学に来た全国の教育関係者らが思うWBとその理由を付箋に書き留め、それらを分類して1枚の大きな「即席新聞」にまとめた。その後、自分たちが前の授業で作った新聞と比較。自分たちの分類は大きく環境、平和、相互尊重、人とのつながり、暮らしの安定の5つ。全国の人たちが考えるWBは、自然、平和、笑顔、元気の4つにくくられた。
一人一人が、「(自分たちが強く意識していた)戦争や原爆がないと答えた人がいなかった」「同じ笑顔でも、自分たちはほかの人も幸せになるという意味だったが、全国のみなさんのはリラックスして過ごせると内容が少し違った」など、共通点や相違点を見つけていった。
幸せとは-。新聞から見つけるだけでなく、取材でもさまざまな価値観に触れる授業を行った松本友美教諭は「広がった考えを、今後、(次の目標である)WBな町づくりにつなげたい」と話した。
防災バッグに何入れる?新聞で磨く判断力(三原市立第五中)
平成30年に死者21人(うち災害関連死13人)、負傷者11人の豪雨災害を経験した三原市の市立第五中では、防災バッグに詰めるアイテムの厳選を題材に、新聞記事を読んだり、新聞記者の話を聞いたりして、自らの判断力を磨く3年生の総合的な学習(減災、情報リテラシー)の授業を公開した。
バッグに入れられるのは10種。飲料水、非常食、簡易トイレ…中にはおもちゃまである。正解はない。生徒によって、家族構成や守るべきものが違うからだ。
新聞では、被災時に歯磨きができず口の中が清潔でなくなると、誤嚥性肺炎のリスクが高まることを説明した記事を生徒に読ませたうえで、リストの見直しを行わせた。「心身の健康を考える必要に気づいた」「バッグにないので歯ブラシを加えようと思った」。初めての知識は素直な中学生たちにしみわたった。
そのほか、同じ班内で推しアイテムを紹介しあい、防災士からバッグの携帯性の大事さを聞いたり、豪雨災害を取材した地元紙の記者から被災者が訴えた「まず逃げられるか」という視点なども聞いたりして、各々がリストを再考した。
授業の後、恐竜のおもちゃを挙げていた女子生徒に、別のものに変えたか尋ねた。「これは小学3年生の弟が悲しくなったときのためのもの。やっぱり必要です」。新聞記事も識者の意見も消化した上で、ますます自分の判断に自信を持ったようだ。
記事を読んだときの変化から自己を探る(県立呉三津田高)
広島県立呉三津田高では生徒が自分を見つめ、社会のどんな事象に興味を持ったり、疑問を感じたりするのかを探る手段として新聞を活用した。公開授業では高校1、2年生の有志生徒25人がNIE活動に取り組んだ経験を踏まえ、新聞の価値について語り合った。
生徒らは班に分かれて、興味を持った新聞記事を紹介しながら、記事の内容が自分にどんな変化をもたらしたのかを説明し合った。軍事に関係することに興味があり、当初「自衛隊の写真が載った記事ばかりを切り取っていた」という高校1年の男子生徒(16)は、陸上自衛隊が中国系ウイルスに感染したUSBメモリーを機密システムの端末で使っていたという記事に着目。そこから、米オープンAIの試験中の生成人工知能(AI)が暴走して外部の企業にサイバー攻撃を仕掛けた問題や、ニチレイのシステム障害など「いままで全く関心のなかった分野の記事も読むようになった」と語り「普段はネットニュースしか読まないが、新聞は幅広く多様な記事に出合えることを再確認した」と振り返った。
他の班の生徒らも「SNSの投稿は消せるが、紙の新聞はなくさなければ永久に残せる」「新聞を読むのは自分の意思を持った行動で成長につながる」などと新聞の価値について意見を交わした。授業を担当した神垣大輔教諭は「新聞を通して自分について知ることをテーマにした。今回の活動を通じて、自分のアイデンティティーにまで思考を深められた生徒もいたのではないか」と話した。
投書や人物紹介…記事の「型」から表現学ぶ(盈進中)
盈進中は国語科の上山朋子教諭が、同校で息長く続いてきたNIEの実践例を紹介。人物を取り上げる「ひと欄」や投書の記事の「型」を用いて、文章力を鍛える方法を共有した。
1年生は、地元紙の投書欄を活用。同世代が「将来の夢」について書いた記事の構成(型)を学び、記事を視写するなどの段階を経て、①【現在】あなたの夢は何か、どんな仕事か▽②【過去】その夢をもった理由やきっかけ▽③【遠い未来】夢をかなえてどんなことを表現しようと思うか▽④【近い未来】夢をかなえるために、これからどのようなことに取り組むか-という型に従い、ワークシートに要点をまとめた後、500~600字で仕上げる作業に取り組んでいる。
2年生は全国紙の「ひと欄」を教材として、記事が①現在②過去③未来の3段落構成になっていることを学習。自分自身を主人公に「ひと欄」の記事を作成し、仲間と作品を読み合うことで、将来に向けたキャリア意識の醸成につなげている。上山教諭は「文章が書けない生徒も『型』を用いることで自信につながる」と効果を説明した。(原田成樹、篠原那美)



