愛知・名古屋アジア大会は19日に開幕し、開会式で日本選手団の旗手を務めたレスリング女子の藤波朱理選手(22)(レスター)が、父・俊一さん(61)と二人三脚でアジアの頂点を目指す。藤波選手はパリ五輪で金メダルに輝き、公式戦153連勝中。しかし、その道のりはけがや父との衝突もあった。
父の指導で才能開花、大学でも二人暮らし
三重県四日市市出身の藤波選手は、国体優勝経験のある父・俊一さんや兄の影響で4歳で競技を始めた。俊一さんの指導で山を走るなどの基礎練習をこなし、天性のタックルのセンスを磨いた。強制ではなく、やる気を引き出す指導方針の下で才能を伸ばした。
俊一さんが教諭を務めていた県立いなべ総合学園高校に入学。3年の時、俊一さんが「五輪で一緒にウィニングランをするには、まず大学コーチの経験が必要」と日本体育大へ移ると、翌年同大に進学。東京で二人暮らしもした。
けがと向き合い、父の変化に感謝
在学中の2022年9月、世界選手権直前の合宿中に左足甲を負傷。出場を断念し、初の長期離脱を余儀なくされた。治療のため車で病院へ向かう途中、運転する俊一さんからため息が漏れ、藤波選手は「お父さんのため息、ものすごく嫌。耐えられない。一緒にやっていけない」と涙ながらに訴えた。円形に脱毛した頭皮を見せた娘に対し、俊一さんは「自分以上に悔しい思いをしているんだと気づかされた。未熟だった」と振り返る。
24年のパリ五輪を数か月後に控えた時期には肘を脱臼し、今大会の代表選考を兼ねた5月の明治杯全日本選抜選手権の前にも膝を負傷。しかし俊一さんは「元々腕が反っているから脱臼しやすいんだ。でも大丈夫」と前向きだ。父の変化に藤波選手は「ネガティブな感じがなくなり、練習しやすくなった」と感謝する。パリ五輪ではセコンドについた俊一さんとウィニングランで喜びを分かち合った。
ロス五輪見据え、チーム指導へ
今春の大学卒業後も所属先は同じ。監督の俊一さんは28年のロサンゼルス五輪を見据え、専属の練習パートナーに専門的な技術指導を任せることにした。「野球にも投手コーチ、打撃コーチがいる。二人三脚でやってきたが、チームで教えたほうがいいこともある」と説明する。
藤波選手は「父が指導者でなかったら、もっと仲は良かったのかな」と思うこともあるが、「もう1回人生があっても今の関係を選ぶ。私以上に私のことを思ってくれる。親子だからこその絆で、心強い」と語る。57キロ級の試合は期間終盤の10月3日。歓声が待つマットへ二人で向かう。
BMX中村輪夢も旗手、「アグレッシブで最高の技を」
自転車BMXフリースタイル男子パークの中村輪夢選手(24)(ウイングアーク1st)も旗手を務めた。ジャンプの高さやトリックの完成度などを競う競技で、「人と違う技が持ち味」といい、21年東京、24年パリ五輪にいずれも5位で出場した。
競技を多くの人に知ってほしいとの思いが強く、「興味を持ってもらえるよう、アグレッシブで最高の技を見せたい」と誓う。「自国開催の喜びをパワーに」と金メダル、さらにはロス五輪も見据えている。



