ウクライナ出身の10歳の少年、ラリオン・シロトキン君が今月下旬、囲碁のプロを目指して初来日した。「将来はプロになりたい」と目を輝かせ、芝野虎丸棋聖(26)や一力遼名人(29)らを輩出した「洪道場」に3か月間住み込んで囲碁に打ち込む。
避難先のアイルランドで囲碁に夢中に
ラリオン君は、ウクライナ東部ハルキウで、3兄弟の次男として生まれた。ロシアによるウクライナ侵略の状況激化に伴い、2022年、母のダリナさん(36)や兄弟とアイルランドに避難した。ダリナさんは「アイルランドに移る前は、戦争が早く終わることを願いながらヨーロッパの友人宅を転々としていた」と話す。
4歳からチェスに親しんでいたが、7歳の時、囲碁が題材の漫画「ヒカルの碁」のアニメを見て、囲碁に夢中になった。英語で書かれた囲碁の本が少ない中、英訳されていた芝野棋聖の書籍で学び、アイルランドで囲碁大会に参加したり、オンラインで対局したりして腕を磨いてきた。好きな棋士はもちろん、芝野棋聖だ。
洪道場で住み込み、実力は院生級
23日には、ダリナさんと共に洪清泉四段(44)が総師範を務める洪道場(東京都杉並区)に足を運んだ。道場では、一緒に訪問した現役棋士にハンデ戦で勝利し、道場内での交流戦にも参加した。今後は道場で寝泊まりし、日本での生活に慣れていくという。
オンラインでラリオン君を指導している清成哲也九段(64)は、すでに囲碁のプロの卵「院生」の中位ほどの力はあるとみる。また、ドイツ在住で「囲碁インフルエンサー」として活動する福島あきらさん(26)は昨年11月、欧州の大会でラリオン君に敗れた。「読みの力と戦闘力を武器に、この年齢でここまで強くなっていることに驚いた」と語る。その後は、対局機会の提供やプロ入りの提案をして、来日を後押ししてきた。
滞在費の支援呼びかけ
「囲碁は局面のバリエーションが多いのが楽しい。ヨーロッパは対局相手が少ないので、洪道場でたくさん対局できることが楽しみ。日本にいる間にできる限り上達したい」と意気込むラリオン君。ビザの関係で、今回は3か月間の滞在となるが、今後、長期滞在も検討するという。洪四段は「中国や韓国出身で日本のプロになった棋士は多いが、欧州出身者は少ない。地道な普及の努力が少しずつ実を結んできた」と語る。
福島さんは、ラリオン君の日本での滞在費の支援を呼びかけている。詳細や寄付はホームページ「アキラの碁」(https://akiras-go.com/)。