第108回全国高校野球選手権島根大会(県高野連など主催)は21日、出雲市の県立浜山公園野球場で準々決勝2試合が行われた。石見智翠館がタイブレイクの末、益田東にサヨナラ勝ち。開星は松江商を五回コールドで下した。22日は同球場で準々決勝の残り2試合が予定されている。
先天性難聴の右翼手、夢の甲子園にあと一歩
十回裏、三塁ベースを回った走者がホームインし試合が終わった。益田東の右翼手・舩本樹空選手(3年)は、目の前で弾んだ打球を捕球し懸命にバックホームしたが、際どいタイミングで走者が先に本塁を陥れた。先天性の難聴というハンデを抱えながら挑んだ甲子園出場の夢は、あと一歩届かなかった。
大阪・堺市出身。プロ野球・阪神タイガースの試合を見るのが好きで、小学2年から野球を始めた。堺市の堺聴覚支援学校中学部に通いながら硬式野球のクラブチームで切磋琢磨した。大阪府内の有力校からの誘いは受け入れ体制に不安が残りためらったが、耳が不自由な選手をエースに育てた益田東の大庭敏文監督と面会。人柄や熱意にひかれ「このチームでやりたい」と親元を離れる覚悟を決めた。
部員全員が指文字を習得、伝達ノートで支え合う
大庭監督は50音の指文字ができる。入部に合わせ、同学年の部員約40人が指文字を習得。練習中、聞き取れない監督の指示は周りの部員が指文字で教えた。ミーティングでの監督やコーチの話は部員が専用の「伝達ノート」にメモし支えた。
3回戦の2安打が評価され、この日は4番に抜てきされたが、「緊張で力んでしまった」と無安打に終わった。人工内耳を両耳に装用するが、打球音もスタンドの歓声もかすかに聞こえる程度。試合後はあふれる涙を拭いながら「最高の仲間と出会い、楽しく野球ができた」と語った。大学でも硬式野球を続ける予定だ。(沢野有輝)



