大分県竹田市の坊ガツル湿原(53ヘクタール)で8月22日、来春の野焼きに備え、延焼防止のための防火帯をこしらえる輪地切りが行われた。標高1200メートルを超える高地に厳しい夏の日差しが照りつける中、県内外から駆けつけた九州電力グループの社員112人を含む152人のボランティアが参加した。
32年ぶりに復活した野焼き
野焼きはススキなどの枯れ草や害虫を焼き払い、植生の維持を図るために行われる。かつては農耕用の牛馬を養うために採草や放牧をする農家らが続けていたが、1950年代半ば以降、耕運機が普及したことなどで状況は一変。坊ガツルでは1968年を最後にいったん途絶えてしまった。
復活に一役買ったのが九州電力だ。大分支店が地元の関係者と実行委員会をつくり、2000年3月、実に32年ぶりとなる実施にこぎ着けた。活動は公益財団法人・九電みらい財団(福岡市)に引き継がれ、現在は同財団が実行委の事務局を担う。担当の黒仁田瑞洋さん(49)は「活動を継続することで、湿原の四季折々の美しい自然を守り、将来に残したい」と話した。
担い手不足が深刻化
他地域の実施団体は、苦しい運営を余儀なくされている。人口減少と高齢化が進んで担い手の確保が難しくなり、作業の安全を担保する技術の継承も差し迫った課題となっている。
由布院温泉の背後にそびえる由布岳は「豊後富士」の別名で知られ、登山客はもちろん観光客にも人気の山だ。由布市湯布院町の温湯区牧野組合は、この山の南麓計約285ヘクタールに今年も火を入れた。
ピーク時に200人程度はいたという組合員は現在、34人。生嶋恭一組合長(71)は「そろそろ限界」とため息をつく。一方で、「一度やめてしまうと簡単には元に戻せない。先祖代々受け継いできた由布岳の美しい景観を、自分たちの代で終わりにしたくはない」と複雑な胸の内を明かした。
外部支援の必要性
野焼きは観光客らを引きつける景観の保全に加え、山火事の防止にも効果があるとされる。生嶋組合長は「次代に引き継ぐためには観光業界、行政を含めた外部からの支援が欠かせない」と語気を強めた。
草原の保全に取り組む自治体などが現状や課題を語り合う「第15回全国草原サミット・シンポジウムinここのえ」(9月5、6日、九重町の九重文化センターなど)を前に、県内の現場を訪ね、関係者の声に耳を傾けた。
輪地切りは、野焼きのエリア以外に火が燃え移らないように、周囲の草や樹木をあらかじめ刈り取る作業。刈り払い機を使い、幅約10メートルの帯状の大きな輪をつくるように刈る。刈った草は熊手などで寄せ集め、後日、焼き払う(輪地焼き)。毎年夏の暑い時期に行われることから「一番大事で大変な作業」と言われる。



