「転んだだけ」と軽く考えていませんか。実は、転倒・転落による死亡者数は交通事故による死者数を大きく上回っており、高齢者では自宅での転倒が命取りになるケースも少なくありません。厚生労働省が公表した「令和6年(2024年)人口動態統計」によると、この年に「不慮の事故」で亡くなった方は4万5743人。その内訳を見ると、転倒・転落・墜落による死亡者数は1万1935人にのぼります。これは、不慮の事故死の中でワースト1位です。さらに驚くべきことに、交通事故による死者数と比べると、約3.3倍もの人が、転倒・転落・墜落によって命を落としているのです。
危険なのは「外」よりも「家の中」
転倒事故というと、「外出先で転ぶ」「駅などで階段から落ちる」というイメージを持つ方も多いでしょう。しかし、実際に多いのは"家の中での転倒"です。さらに、「家の中での転倒」による死亡者の大多数が高齢者であることも、同統計調査からわかっています。「家庭における不慮の事故による死因」を見ると、家庭での平らな場所での転倒(「スリップ、つまずき及びよろめきによる同一平面上での転倒」)のうち、65~79歳が約24.0%、80歳以上は約67.0%を占めています。階段での転倒・転落(「階段及びステップからの転落及びその上での転倒」)でも同じような結果で、65~79歳が約36.4%、80歳以上が約50.5%を占めているのです。つまり、「慣れた自宅だから安心」「このくらいの段差は大したことない」という油断こそが、最も危険なのです。
転倒は「たまたま」ではない
ここで、ぜひ覚えておいてほしいことがあります。高齢者の転倒は、「運が悪かった事故」ではありません。多くの場合、老化によってつくられた「転びやすい体」が招いた結果なのです。その変化は、日々の「歩き方」にも表れます。歩幅が狭くなり「ちょこちょこ歩き」になっている場合は、転倒のリスクが高まっているサインです。逆に、大きめの歩幅で「スタスタ歩き」ができている人は、筋力やバランス能力が維持できている可能性が高いでしょう。歩幅の違いは、そのまま将来の転倒、さらには寿命にも関わってくるのです。
本書『歩幅を見れば、寿命がわかる 「死ぬまで歩ける体」のつくり方』(安保雅博著/アスコム)では、「外出先などで、階段や段差を避けるようになった」「気がつくと、すり足やちょこちょこ歩きになっている」「何もないところでつまずきそうになり、ヒヤッとする」といった変化を、「歩く力」が低下してきたという体からの重要なサインと指摘しています。歩く力の衰えのサインとして、わかりやすいのが歩幅の変化です。歩幅が狭くなると、すり足やちょこちょこ歩きになる、つまずきやすくなる、転倒や骨折のリスクが高まる、外出が減る、筋力・体力がさらに低下し気力も低下するという「負の連鎖」が起こり、その先には「歩けなくなる未来」が待っています。この変化はある日突然起こるのではなく、気づかないうちに少しずつ進んでいくため、早期に自分の状態に気づき、正しく体を整えることが重要だとしています。
同書では、15万人以上の患者を診療してきたリハビリの名医である安保雅博氏が、老化のメカニズムとその予防・改善方法をわかりやすく解説しています。



