降雪期前のシカ捕獲、長谷猟友会会長に同行 南アルプスでわな設置
降雪期前のシカ捕獲、長谷猟友会会長に同行 南アルプス

南アルプスのシカによる食害を防ごうと、長野県伊那市を中心に対策が続けられている。その一つが奥山での重点捕獲だ。降雪期を前に高山帯から移動する秋のシカを狙うため、ハンターたちが奥地に分け入り、わなを仕掛けている。現場で奮闘する猟友会会長に同行した。

登山基地へ続く林道で痕跡を確認

9月中旬、南アルプス北部・仙丈ヶ岳や甲斐駒ヶ岳への登山基地・北沢峠へと続く林道で、長谷猟友会会長の中島章さん(76)が車のハンドルを握りながら周囲に目を光らせた。

「足跡がくっきりしている。昨日、今日のだな」。設置したわな50基の周辺の痕跡を確認し、捕獲できる可能性が少しでも高まるよう仕掛ける場所を微修正する。痕跡があっても山肌が険しすぎて設置が困難だったり、人間の気配に気づいて急にわなにかからなくなったりと一筋縄ではいかない。中島さんは「追いかけっこのよう」と苦笑する。

昨年は130頭を捕獲、今年も順調

山麓の伊那市長谷地区の猟師らでつくる同猟友会は、市などの委託を受けて、昨年から本格的に里地より奥にある山中での捕獲に取り組む。シカが栄養価が高い高山植物を求めて山に登る春と、降雪を避けて高山帯から下りる秋の計80日程度、移動経路にわなを仕掛ける。猟友会員が交代で見回りしている。

生息数が多いと予想されながら捕獲の空白地となっていた場所だけに、昨年は限られた期間で計130頭のシカを捕獲。今年も9月までに44頭と、順調に成果を上げている。

「地元のシンボル・仙丈ヶ岳を守りたい」

中島さんは会長として、見回りの当番を組んだり、わなの設置場所を調査したりしながら、こまめに現場まで足を運ぶ。長年捕獲を免れた結果、里山の倍近い大きさに育ったシカもいるといい、「畏れ多いぐらいだった」と振り返る。「山奥にこれだけのシカが生息しているとは」と驚きを隠さない。

見回りを行うメンバーの大半は65歳以上で、捕獲にはシカの反撃や滑落の危険も伴う。それでも「地元のシンボル・仙丈ヶ岳を守りたい」との思いが活動を支えている。

この日、わなにシカはかかっておらず、きびすを返そうとした時だった。「ピャー」。鳴き声を聞いて振り向くと、数頭のシカが山の奥へ走り去っていった。「ここで防がなければ、どんどん山を荒らされてしまう。気を引き締めなければ」。中島さんが決意の表情を浮かべた。秋のシカ猟は11月半ばまで続く。