愛媛県宇和島市の元職員が退職金の半額不支給処分の取り消しを求めた訴訟で、松山地裁宇和島支部は14日、市の処分を取り消す判決を言い渡した。木村哲彦裁判長は「確定判決の拘束力に反し、違法」と指摘。元職員の代理人弁護士は「行政が前回の判決を冷静に判断せず、2度も負けるのは前代未聞」と批判した。
経緯:自治会費管理の不備から懲戒免職へ
元職員の男性は2014~2019年度、自宅マンションの自治会費の管理が不適切だったため、約18万円の使途不明金が判明。私的に使ったと認めた。公務ではなく刑事事件にもなっていないが、市は2021年6月、「横領を繰り返した」として懲戒免職にした上で、退職金約1640万円を全額不支給とする処分を行った。
前回訴訟:全額不支給処分が取り消し確定
元職員はこの全額不支給を不服として同年12月に提訴。2023年9月の地裁判決は処分取り消しを命じ、2024年4月の高松高裁判決も市側の控訴を棄却した。判決は「預かり金の管理がずさんだったが、強い横領の意思は認められない」とし、退職金に賃金の後払いや生活保障の性格が含まれることから「約30年にわたる勤続の功を全部抹消するに足りるほどの著しい不信行為はない」と指摘した。
市の再処分と再度の提訴
判決確定後、市は元職員に対する処分を再度検討。同年6月、「横領を繰り返した」という当初と同じ理由で、退職金の半額不支給を決めた。これに対し元職員が再び提訴した。今回の訴訟では再処分の妥当性が争われ、市側は「確定判決は横領の意思を全面的に否定したものではなく、処分の軽重を改めて審議し、半額不支給を決めた」と主張した。
地裁判断:確定判決の拘束力に反する
木村裁判長は、処分を取り消す判決が確定した場合、行政は同じ理由で同一内容の処分を繰り返すことができないと指摘。再処分の理由は表現に変更があるものの「横領を繰り返した」という認定は維持されており、「確定判決の拘束力に反する」と結論づけた。
元職員側の反応と市の対応
判決を受けて、元職員側の代理人弁護士は「そもそも最初から横領と決めつけて、不当に重い処分としたところから間違っている。コンプライアンス意識の欠如だ」と問題視した。宇和島市総務課は「判決を確認しておらず、現時点ではコメントを控える。内容を精査し、今後の対応を検討する」とした。



