不登校の生徒を受け入れた「救いの高校」、最後の卒業式で幕…全国わずか3校の組合立校が閉校
不登校受け入れの高校、最後の卒業式で幕…組合立校が閉校

不登校の生徒を受け入れた「救いの高校」、最後の卒業式で歴史に幕

多くの公立高校で卒業式が行われた3月1日、福岡県久留米市にある三井中央高校では、特別な式典が開かれた。不登校の生徒らを受け入れてきた女子校として知られる同校が、今月末の閉校を前に、最後の卒業式と閉校式を実施したのである。サプライズ企画も交え、卒業生85人が学びやに別れを告げ、感動的な瞬間が繰り広げられた。

卒業生代表が振り返るかけがえのない青春の思い出

閉校式では、卒業生代表の生徒会長(18歳)がスピーチを行い、「学びやとしての形はなくなるかもしれません。しかし、母校で学び、笑い、支え合った日々はかけがえのない青春の思い出です」と、3年間を振り返った。歴代の校長や地域住民、約100人の同窓生も出席し、大山明校長(65歳)による校旗の返納や校歌の斉唱が行われ、多くの卒業生が涙をぬぐう姿が見られた。

三井中央高校は1963年に開校し、久留米市など3市1町の組合が運営する「組合立」高校として、全国でわずか3校しかない貴重な存在だった。しかし、少子化の影響により、1学年200人だった定員は2018年以降120人にまで減少。近年は「選ばれる学校」を目指し、不登校を経験した生徒の受け入れに力を入れてきたが、入学者の定員割れが続き、2022年に閉校が決定。2023年春の入学者を最後に募集を停止していた。

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不登校経験者の卒業生が語る成長の軌跡

中学時代に不登校を経験した卒業生(18歳)は、「いじめもないのに学校に行けない自分が嫌いだったけど、時には家に来て親身に話を聞いてくれる先生たちのおかげで、ありのままの自分を受け入れられるようになった」と語り、教員の支援に感謝の意を表した。この言葉は、同校が不登校の生徒に寄り添う教育を実践してきた証しと言えるだろう。

歌手GACKTさんのサプライズ出演で会場が沸く

式典終了後、同校の閉校を知った歌手のGACKTさんがサプライズで登場し、会場は大歓声に包まれた。毎年各地の学校の卒業式に出演しているというGACKTさんは、自身の楽曲「野に咲く花のように」を熱唱。卒業生に向けて「夢は見るものじゃない、夢はかなえるもの。かなえること、それは強い意志を貫くこと」との激励のメッセージを贈り、感動を呼んだ。

教員への感謝を込めたサプライズの「卒業式」

卒業生たちもサプライズを仕掛け、教員ら約30人に対する「卒業式」を敢行した。一人一人に異なる内容の「卒業証書」を渡し、相談にのってもらったり、優しく接してもらったりしたことへの感謝を伝えた。例えば、1977年に着任後、中学でいじめや人間関係のもつれを経験した生徒たちに寄り添ってきた常勤講師の石松勲さん(71歳)には、「三井中央高校のおじいちゃんとして若者にはない考え方をたくさん教授してくださいました。49年間の職務を全うしたことをここに賞します」との卒業証書が贈られた。

石松さんは「卒業が近づくにつれて積極的に会話できるようになった生徒もいて、本人たちの頑張りの成果だと思う。自分も一緒に成長させてもらった」と涙を浮かべ、教員と生徒の絆の深さを物語っていた。

少子化による公立高校の統廃合が全国で進行

三井中央高校の閉校は、少子化に伴う公立高校の統廃合の一例に過ぎない。文部科学省の学校基本調査によると、1995年度に4164校あった全国の公立高校は、昨年5月時点で3426校となり、この30年で約2割減少している。

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例えば、長崎県では全日制の県立高校54校中、42校で定員割れが発生。多様な学習や行事、部活動への支障を鑑み、教育関係者らによる会議で再編整備に向けた議論が進められている。また、山口県教育委員会は昨秋、7市14校の県立高校を2033年度までに7校に再編統合する計画案を公表。14年後の中学卒業者は現在より約4割減る見通しで、担当者は「望ましい学校規模を確保することで教育の質の向上を図りたい」としている。

こうした背景から、三井中央高校の閉校は、地域の教育環境の変化を象徴する出来事となった。不登校の生徒を受け入れる「救いの高校」としての役割は終わったが、その教育理念と卒業生たちの思い出は、今後も受け継がれていくことだろう。