「親でもないくせに」――その一言が継親を傷つける理由
再婚家庭が4組に1組を占める現代日本。しかし、ステップファミリーにおける子育ての難しさは、社会であまり語られることがありません。特に、血のつながらない子どもを育てる「中途養育者」――継父や継母、里親など――は、「親でもないくせに」という何気ない一言に深く傷つき、怒りを覚えることが少なくありません。ノンフィクションライターの大塚玲子氏が、その背景と解決策を探ります。
「通常の父親」という役割期待がプレッシャーに
町田さん(仮名)は、中途養育者を取り巻く問題について、「まず社会からの役割期待がある」と指摘します。継父や継母は、「自分は『通常の父親』のようにふるまわなくてはいけない」「いい父親にならなければいけない」と感じてしまいがちです。後者の「いい父親」という規範は、いわゆる「ふつう」の父親にも共通するものですが、中途養育者にとってはさらに重いプレッシャーとなります。
さらに、ステップファミリー特有の問題として、「再婚相手からの期待」があると町田さんは言います。「子どもの実親が、パートナーに『元の親の代わりになってほしい』という期待をかけてしまうことがあり、これが不和の元になりやすい。『元の親とは別の親になる』という認識ならまだいいのですが、『前の父親(母親)はリセットして、その代わりになる』という発想だと、子ども自身やその人生を無視することになってしまいます」
子どもの歴史を否定する「リセット」発想の危険性
子どもにはそれまでの人生のストーリーがあり、以前の親との絆も(たとえそれが不適切な養育だったとしても)その子の一部です。それを「リセット」して代わりになろうとするのは、その子が歩んできた歴史を塗り潰し、存在を否定することにつながってしまうと、町田さんは警鐘を鳴らします。
では、「親でもないくせに」と言われたとき、言われた側はどうしたらいいのでしょうか。町田さん自身、かつて親族の子どもたちを育てていたときに「父親じゃない」と言われた経験があり、「その言葉がどれだけ刺さるかは、とてもよくわかる」と話します。「やっぱり、言われたときは頭に来るんですよね。でも実際、元の親とは違うわけですから、『そうだよ、だから何』と流すしかありません」
「周囲に明らかにする」ことから始める解決策
子どもとの関係に頭を悩ませる中途養育者は大勢いるはずです。しかし、そういった大人の声はあまり聞こえてきません。町田さんは「隠さずに、表に出すことが重要だ」と強調します。「『実の子どもではないけれど育てている』という事実を、周囲にオープンにすることがまず必要だと思います。里親と同じように、継親だって賞賛されていいはずです。わざわざ子どもがいる相手と結婚して、養育にあたろうというのですから」
ステップファミリーや継父、継母はどこかタブー視されていて、本人たちも言いたがらないというのが、今の社会の現実です。しかし、町田さんは「オープンにすることで、周囲の理解が得られ、孤立を防げる」と話します。中途養育者の存在が可視化されることで、社会全体のサポート体制も整う可能性があります。



