浪人経験者が減少する中、9年の浪人生活を経て早稲田大学に合格した教育系ライターの濱井正吾氏が、様々な浪人経験者にインタビューする連載。今回は、東京都出身で旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の二世として育ち、都立国立高校から2浪で東京大学理科1類に合格した宮下健一さんを取り上げる。
「2浪はニートと一緒」と追い詰められた日々
宮下さんはA判定で臨んだ1浪目の受験で大きな失敗を犯した。焦りからセンター試験会場で失禁するほどのプレッシャーに押しつぶされ、不合格に。両親は「浪人してもいい」「あなたの人生だから」と励ましたが、宮下さん自身は「2浪はニートと一緒、自分に生きる価値はない」と自己肯定感を失っていた。
宗教二世としての複雑な思い
宮下さんは「宗教二世と言うと同情されるが、良かった面もきつかった面もあり、一言では表現できない」と語る。両親は統一教会のスタッフで家庭は経済的に余裕がなく、テレビゲーム機もなくお小遣いも少なかった。しかし、教会のコミュニティは年上の学生や社会人と広く関わる場でもあり、それが東大を目指す原動力となった。
教会のサマーキャンプが人生を変えた
小学3年生の夏、教会のサマーキャンプに参加。食前にお祈りをする写真が残されている。このコミュニティを通じて知り合った大人たちが、後に彼の人生観を変えるきっかけを与えた。また、教会が主催するアメリカへの研修旅行も、視野を広げる重要な経験となった。
浪人を経て得たもの
宮下さんは現在、大学生のキャリア教育に関わる仕事に就いている。浪人経験は「人生を劇的に変えた」と振り返り、「可哀想な存在と捉えられるのは複雑」としながらも、その経験が今の自分を形成したと語る。浪人という選択肢が減少する中、彼のストーリーは再評価に値する。



