豊島岡女子学園中学校・高等学校(東京都豊島区)は6月3日、中学3年生の「道徳」の時間に「いじめ予防授業」を実施した。同校は2015年から中学1年生から高校1年生を対象にこの授業を行っており、学校生活のさまざまな場面を想定していじめの構造を学び、予防につなげている。この日は同校卒業生で弁護士の真下麻里子氏らが講師を務めた。
いじめの定義と4層構造を学ぶ
授業は3年4組で6時間目に行われた。真下氏は、いじめの事例とワークシートを生徒と確認し、自己紹介をしてから授業を始めた。最初に、仲良しの3人組(Aさん、Bさん、Cさん)をめぐる事例を読み合わせた。BさんがCさんにきつい言動をとるようになり、それを注意したAさんが今度はBさんに悪口を言われ無視される。さらにBさんに同調したDさんや、その場の空気から話を合わせたEさんも登場する内容だ。
読み合わせ後、このケースが「いじめ」に当たるかを検討した。真下氏は、いじめ防止対策推進法でのいじめの定義を紹介し、「相手が『心身の苦痛』を感じていたら、それを『いじめ』と考え、みんなで早く気付いて対応していくことが大切です」と説明。このケースはAさんのつらさが資料に明記されているため「いじめ」として対応することになると語った。
続いて、いじめの構造についての説明があり、真下氏は黒板に「いじめの4層構造」として「被害者」「加害者」に加え、悪口を面白がったり賛同したりする「観衆」、見て見ぬふりをする「傍観者」が存在することを示した。
生徒が自分の行動を考える
授業では、Bさんの悪口に話を合わせたEさんはどう行動すればよかったのかを、ワークシートを使って考えた。生徒からは「何も言わずにトイレに行く」「別の話題に切り替える」などの意見が出た。真下氏は、いじめに加担せず抑止するための行動として、話題や空気を変える「スイッチャー」、加害者と被害者の間に入る「仲裁者」、先生などに伝える「通報者」、被害者に寄り添う「シェルター」などの選択肢を紹介した。
最後に、いじめに気付いたXさんが友達のYさんから「私は中立でいたいから関わらないようにする」と言われたケースを例に、「中立」といえるかを検討させた。真下氏は「『中立』などの正しそうな言葉に惑わされず、自分の良心に従った行動を取れるようになってほしい」と説いて授業を終えた。
授業の背景と今後の取り組み
この授業は2014年に始まった卒業生インタビューがきっかけで始まった。中3生が夏に卒業生の職場を訪問する中で、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」でいじめ予防授業を展開する真下弁護士と出会い、2015年度から実施している。生徒部長の元谷聡恵教諭は「2013年に施行されたいじめ防止対策推進法を基に学校でいじめ予防に関する授業をしているということを聞き、本校でもぜひと15年度からスタートしました」と振り返る。
授業は毎年、NPO法人に所属する数人の弁護士が担当している。中1は「いじめの定義」、中2は合唱コンクールをめぐるトラブルをテーマにいじめの発生と重大化の構造、中3は中立とは何か、高1は部活動でのいじめを題材に「模擬調停」を行う。元谷教諭は「いじめ問題には絶対の答えがなく、考え続けることが大切」と語る。
真下氏は「子供がいじめを自分事として考えるためには、報道されるような重大事件よりも、身近な事例を取り扱う方がよいと考えました」と話す。授業では多様な意見を歓迎し、「周りと違う意見が出ても、それを許容する空間であることが大切です」と述べた。
授業を受けた吉田瑞希さんは「いじめに対する役割がたくさんあることを教わったので、自分には何ができるかを考えられるようになりました」と話す。渋谷茉由さんは「たった一つの言動が人を傷付け、いじめに発展する可能性がある。もし教室で同じようなことが起きた場合は、被害者を助けられる方法を考え、実践したいです」と語った。
同校は月1回、いじめ防止対策委員会定例会を開き、いじめの芽を早期に摘む取り組みも行っている。元谷教諭は「真下先生の授業は、社会に出ても役立つヒントになる授業です。これからも長く続けていきたいと思っています」と期待を寄せた。



