「厳しくすればハラスメント、配慮すればぬるい」――そんなジレンマに悩むリーダーは少なくない。しかし、若手社員の育成に本当に必要なのは、「たった1つのこと」を怠らないことだと、一般社団法人成長企業研究会理事で株式会社ワンストップHOP取締役の大神千穂氏は指摘する。
営業の暗黙知を言語化せよ
例えば、営業のOJTで社員を同行させた際、社員は不思議な光景を目にする。社長が取引先と「いや〜久しぶりです。あ、その時計いいですね。また買ったんですか」と世間話をしたかと思えば、「それで今日はですね、こんな話があるんですけど」と自社商品の話を始め、そのまま成約に至る。社長にとっては、人間関係と絶妙なコミュニケーションに裏打ちされた営業術だが、社員に「商品力より関係づくり」と伝えても、「なるほど」で終わり、再現は不可能だ。
このような経験則や暗黙知も、営業プロセスを分解して言語化すれば、再現可能なメソッドになる。それはそのまま成長の構造化につながる。自分の強みが明確になり、社員に言葉で伝えることもできるようになるのだ。
世代間ギャップは「理解」して「利用」する
「教えてもらっていないので、できません」――若手社員のそんな言葉に嘆く社長は多い。上司や先輩の仕事を見て盗んできた世代からすれば努力不足に見える。失敗してもいいからやってみろと言っても、「それってムダじゃないですか?」と返ってくる。正解があるなら聞いたほうが早いというのは、合理的とも言える。
価値観や考え方の世代間ギャップはいつの時代にもある。一方、若手社員は真面目で頭がいいと評価する声も多い。納得さえできれば、むしろハングリーに自己成長を求める一面もある。世代間ギャップは嘆くものではなく、理解して利用するものだ。若手は「教えてもらわないとやらない」のではなく、「納得できればやる」のだ。
「自分で気づけ」「続けていればそのうちわかる」といった、小さな会社の社長にありがちな当たり前は一旦しまい、やるべきことを言語化・明文化し、できたら評価するルールを打ち出すべきだと大神氏は説く。
相手の価値観を変えるのは困難
次ページでは、相手の価値観を変えることの難しさと、それでも育成を成功させるための具体的なアプローチが続く。



