目黒日本大学中学校・高等学校(東京都目黒区)で昨年度、生徒が主体となって広報活動を行う「MNU広報委員会」が発足した。2年目となる今年度は、中1から高3まで86人の生徒が自主的に参加して、学校説明会の運営や広報誌の制作、ブログによる情報発信などを行っている。学校広報を担う生徒たちに、活動への思いなどを聞いた。
ブログの発信が一つの転換点に
「MNU広報委員会」は昨年4月に発足し、2学期から生徒による学校広報活動がスタートした。入試広報部主任の天野正貴教諭の呼びかけに対し、中学と高校合わせて40人弱の生徒が手を挙げた形だ。この生徒主体の広報委員会を始めた理由を天野教諭は次のように説明する。
「これまでは、学校説明会を開催するたび、参加者を募集して運営の手伝いをしてもらっていました。ですが、単発の活動であったため、生徒たちの実績として記録に残らないという課題がありました。せっかく生徒たちが一生懸命取り組んでくれているのだから、活動実績を残せるようにしたいと考えて、学校説明会の運営を含めた広報全般を担う組織を作ることにしたのです」
昨年度は、中学の学校説明会を5回開催したほか、夏休みの学校公開日には約800人の受験生と保護者を迎えて授業体験イベントを実施した。また、広報誌「MEGURU」を創刊して、在校生から見た同校の魅力や学校行事などを紹介した。それまで教員が交代で書いていたウェブサイトのブログは、「MNU広報委員会」の申し出により、2学期から生徒たちが引き継ぐことになった。天野教諭によれば、ブログの担当が教員から生徒に移ったことが、「MNU広報委員会」の一つの転換点になったそうだ。
「委員会が発足した当初は、私が学校広報に関する企画を提案して、それを生徒たちが実行に移すという方法を取っていたのですが、生徒の方から『自分たちでブログをやりたい』という声が上がり、ブログの発信を委員会に委ねることにしたのです。現在は、月曜から金曜までほぼ毎日、生徒の署名付きブログをウェブサイトで公開しています。このブログがきっかけとなり、生徒たちは『MNU広報委員会』の活動により主体的に取り組むようになったと思います」
メンバー86人、手際よく役割分担や情報共有
発足から2年目となる今年度は、中1生23人、中2生18人、中3生12人、高1生15人、高2生10人、高3生8人の計86人が名乗りを上げた。中学の広報委員長1人、副委員長3人、高校の広報委員長1人、副委員長2人の7人を中心に、中学と高校の広報活動を担っている。「40人弱でスタートした委員会でしたが、今年は倍以上の人数が集まりました。予想以上に大きな反応がありました」と天野教諭は話す。
終業式のあった7月21日、多目的教室「さくらルーム」で行われたランチミーティングを取材した。このランチミーティングは、全メンバーを対象に月2回の頻度で開催されるもので、昼食を食べながら連絡事項を確認したり、次の企画への参加者を募ったりする場だ。ミーティングに出席できない生徒とは、ICTツールを通して情報を共有しているという。この日は、夏休みに開催される「第3回高校説明会」「第4回高校説明会」「中学学校公開日」の三つのイベントの補助業務について話し合われた。
「第3回高校説明会の役割を決めようか。参加できる人、前に出てきて」。一人の女子生徒の呼びかけで、10人ほどの高校生が教室前方に集合。間近に迫った学校説明会への参加を希望した生徒たちだ。先に呼びかけを行った生徒は、「司会、受付、体育館内誘導、照明の係が必要だよね」と話しつつ、黒板に四つの係を書き出す。その後は参加予定者が話し合い、当日の役割があっという間に決まった。「第4回高校説明会」の補助をする高校生と「中学学校公開日」の補助をする中学生の役割もスムーズに決まり、「先生、終わりました」「ありがとう」というやり取りが続く。全体ミーティングでの決定事項は、企画ごとのチームに引き継がれ、天野教諭ら顧問を交えてチームごとに広報活動を行うことになっている。
全体ミーティングではこのほか、制作準備中の「MEGURU vol.3」や、同校が制作しているラジオ番組「目黒日大RADIO」、6月に開催した文化祭「すずかけ祭」のウェブサイト紹介ページに関するアンケートも実施され、出席していた委員会メンバーはそれぞれタブレット端末から回答を送った。
受験生や保護者との交流にやりがいを感じる
高校の広報委員長・濱田小葵(さき)さん(高3)と同副委員長の伊澤奈那さん(高1)に話を聞いた。昨年度から「MNU広報委員会」に所属している2人は、受験生に目黒日大の学校生活の様子を直接伝えたいと考え、広報活動に参加することにしたという。「学校のよさをいろいろな人に知ってもらいたいという気持ちと、在校生の視点で学校生活の実態を伝えたいという気持ちがあります。こんな楽しいことがあるよとか、こういうつらいこともあるよとか、この学校の生徒だからこそ言えるありのままの情報を届けられたらいいなと思います」と伊澤さんは話す。
学校説明会で受験生や保護者と交流した経験のある2人は、「保護者からかけられた言葉にやりがいを感じた」と振り返る。濱田さんは昨年度、学校説明会に参加した帰り道に受験生の保護者にねぎらいの言葉をかけられたという。「『娘も目黒日大を気に入ったみたいです』と言われて、本当にうれしかったです」
伊澤さんは今年度の文化祭で保護者から声をかけられ、「学校説明会に出ていらっしゃいましたよね。おかげさまで息子が入学できました」と報告を受けたそうだ。「自分が広報活動に参加して、実際に入学してくれた受験生がいるんだなということがわかって、やっていてよかったなと思いました。誰かの人生の後押しができたと思うとすごくうれしいです」
濱田さんたち高3生は、大学受験に備えて、間もなく委員会活動から引退することが決まっている。今後は伊澤さんたちが中心となって「MNU広報委員会」をもり立てていく。「今も取り組んでいる学校説明会やブログ、広報誌などの活動は残しつつ、目黒日大の情報を発信できる新しいアイデアがあればどんどん取り入れてほしいと思います。8月にはホームページに受験生ポータルサイトがオープンするので、とても楽しみにしています」と、濱田さんは後輩たちに思いを託した。
同校は、「目黒日大生として目指すべき姿」を「価値観」と「スキル」の2種類の学校ルーブリック(評価基準の一覧表)にまとめている。天野教諭は、「MNU広報委員会」への取り組みもこの学校ルーブリックに当てはめて評価できると説明する。「広報委員会の活動目的は、有益な情報を提供して受験生と保護者に喜んでもらうことにあります。委員会のメンバーは、ホスピタリティーを第一に考えてさまざまな広報活動に取り組んでいますので、対人スキルは確実に向上していると思います。今後も委員会活動を通して、ルーブリックの中の『共生』と『人間関係力』を高めていってほしい」と天野教諭は期待を込めた。



