有名校長去りし後の桜丘中学、改革の遺産と公立校の課題
有名校長去りし後の桜丘中学、改革の遺産と公立校の課題

校則・テスト廃止の改革、その後

東京都世田谷区立桜丘中学校は、校則や制服、チャイムの廃止、定期テストや宿題の廃止、さらには授業に出ない自由まで認めるという、常識破りの改革で全国的に注目を集めた。改革を主導したのは、2010年から2020年まで校長を務めた西郷孝彦氏だ。しかし、西郷氏が退任した後、桜丘中学校はどのような道を歩んでいるのだろうか。

「今は普通の中学校になってしまった」と、元教員の一人は語る。改革の象徴だった校長室も、かつては生徒が自由に出入りできたが、今では通常の校長室に戻った。また、西郷氏の時代に廃止された定期テストも復活している。

改革の核心:「子ども一人ひとりが主語」

西郷氏の改革の根底には、「子ども一人ひとりが主語」という理念があった。校則をなくしたのも、その一環だった。2019年に筆者が西郷氏を取材した際、彼はこう説明している。「ある日突然に校則をなくしたわけではありません。『なぜ校則で決めなければいけないのか』を一つひとつ議論していくと、決める必要がないものばかりで、一つひとつ廃止していったら、校則そのものがなくなりました」

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この取り組みは、全国の教育関係者から注目され、多くの学校が追随しようとした。しかし、西郷氏の退任後、桜丘中学は徐々に従来の学校運営に戻りつつある。

公立校の改革と持続性の課題

この事例は、公立学校の改革が「校長のリーダーシップ」に大きく依存していることを浮き彫りにしている。校長が代われば校風も変わるという現実は、改革の持続性に疑問を投げかける。西郷氏のようなカリスマ的な校長がいなければ、大胆な改革を維持することは難しいのだ。

元教員は「西郷さんは『子ども一人ひとりが主語』をいち早く実現した。しかし、その後の校長が同じ理念を継承するのは容易ではない」と指摘する。公立校では、人事異動によって校長が数年で交代するため、長期的な改革を定着させるには、システム自体の見直しが必要かもしれない。

改革の遺産と未来への教訓

それでも、桜丘中学の改革は無駄ではなかった。校則やテストの廃止は、教育の在り方に一石を投じ、多くの議論を呼んだ。西郷氏の試みは、公立校でも大胆な改革が可能であることを示した点で、意義深い。

現在の桜丘中学は「普通」になったが、かつての改革の精神は、一部の教員や生徒の心に残っているかもしれない。公立校の改革を成功させるためには、一人のリーダーに頼るのではなく、学校全体の文化や仕組みを変える必要がある。桜丘中学の事例は、その難しさと可能性を同時に教えてくれる。

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