フリースクールの日常:学校復帰より社会復帰を重視
不登校の子どもたちの受け皿となるフリースクールでは、どのような日常が送られているのか。長野県が2024年に開始した「信州型フリースクール認証制度」の第1期認証を受けた「寺子屋TANQ」は、子どもたちの拠り所であると同時に、自身の目標に向かう学習を支える「学び支援型」の施設だ。運営者の市川氏は元教員で、学校現場での限界を感じてフリースクールを立ち上げた。
「みんな同じは無理」:元教員が感じた学校の限界
「学校で勤務する中で、全員が1人から教わって、同じことが同じように、同じタイミングでできるようにならなければいけないということは、もはや難しいのではないかと思うようになっていったんです」と市川氏は語る。例えば、長野県でも外国籍で日本語を話せずに小学校に入学する子どもがいる。異なる言語でのコミュニケーションや、話し言葉だけわかる子にはローマ字でお便りを書くなど、さまざまな工夫をして時間をかければ日本語は上手になるが、同学年のクラスメイトと同じことができるようになるわけではない。
すべての子どもに異なるスタートラインとゴール
市川氏は「海外ルーツの子だけでなく、すべての子どもはスタート地点が異なり、自身のペースがあり、本来はそれぞれのゴールもある。そうしたことを大事にできるような場所を作りたいと思った」と述べる。寺子屋TANQでは、学校復帰を目標とするのではなく、子どもたち一人ひとりが自分の目標に向かって自己決定できる環境を提供している。具体的には、学習時間や活動内容を子ども自身が選択し、自分のペースで進めることができる。
信州型フリースクール認証制度の仕組み
長野県の認証制度には「居場所支援型」と「学び支援型」の2種類がある。寺子屋TANQは「学び支援型」として認証され、県から財政支援や体制支援を受けている。この認証により、フリースクールは公的な位置づけを得て、より安定した運営が可能となる。県内では他にも複数の施設が認証を受けており、不登校児童・生徒の多様なニーズに応える体制が整いつつある。
社会復帰を目指す教育の実践
寺子屋TANQでは、子どもたちが社会に出るためのスキルを身につけることも重視している。例えば、コミュニケーション能力や自己管理能力を養う活動を取り入れ、学校に戻ることだけがゴールではないという考え方を徹底している。実際に、同スクールを卒業した子どもたちの中には、高校進学や就職など、それぞれの道を歩んでいるケースが多いという。
今後の課題と展望
フリースクールの認知度はまだ十分とは言えず、経済的な負担を理由に利用をためらう家庭もある。市川氏は「すべての子どもが自分のペースで学べる環境を整えるためには、行政のさらなる支援が必要」と訴える。長野県の認証制度はその一歩だが、全国的な広がりが期待される。



