桃山学院中高、中学1年から少人数クラス化 自主自律の精神育む
桃山学院中高、中学1年から少人数クラス化 自主自律の精神育む

桃山学院中学校高等学校(大阪市)は今年度、中学1年からの少人数クラス化に踏み切った。同校は創立140年以上の歴史の中で「自主・自律の精神」を持った生徒の育成に取り組んでおり、このクラス再編も、生徒一人一人にいっそう寄り添った教育を通して豊かな人間性を育てる新たな取り組みだという。同高出身で20年にわたって教壇に立ってきた田中智晴教頭に同校の教育方針や校風について聞いた。

「愛」ある関係性の中での「責任ある自由」

田中教頭は、桃山学院高等学校から奈良教育大学に進学。卒業後は理科教員として他校で9年の経験を積み、20年前に母校である桃山学院に赴任した。高校の生物担当、学年主任などを経て、2023年から教頭を務める。

「本校は1884年、英国人宣教師によって創設された学校です。創立以来、キリスト教信仰に基づく『自由と愛の精神』を建学の精神とし、生徒の個性を尊重し、『自主・自律の精神』を育む教育を受け継いできました」と田中教頭は語る。

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「本校は、『自由と愛の精神』に基づいた学びの場であることを最も大切にしています。自由というのは、何でも自分の好きなようにしてもいいという意味ではありません。互いに他者を尊重して奉仕し合う、『愛』ある関係性の中での『責任ある自由』を指します。自らの責任を自覚し、良識を身に付けて自分で考えて行動できる、そんな『自主・自律の精神』を持った生徒の育成を目指しています」

この教育方針は普段の生徒指導にも表れている。髪形や服装についての細かい規則を明文化した「校則」は存在せず、「生徒心得」という表現で、自ら規律ある学校生活を送るよう努力しなければならないと指導している。

あまりにも学校生活にふさわしくない服装であった場合などは、教員が声掛けをするが、規則で一律に縛るのではなく、教員とのコミュニケーションを通じて、生徒たちは時と場合に応じた装いやふるまいを学び、次第に自分で判断できるようになる。高校では選択肢の一つとして標準服があるが、基本的に服装は自由だ。

こうした指導方針の根底には、「自主・自律の精神」を育むと同時に、生徒たちの個性を尊重したいという考えがある。個性の尊重を通して、一人一人の可能性を伸ばしていくことができると考えている。

「自主・自律の精神」を育む豊富な体験学習

「自主・自律の精神」を具体的にどのように育むのか。一つには、体験学習が大きな役割を果たす。中学では3年間に6回の宿泊行事を設定している。中学入学直後の「オリエンテーション合宿」から始まり、マリンアクティビティーにチャレンジする「サマーキャンプ」、中2で「英語サマーキャンプ」と「スキー合宿」、中3は企業や大学を訪問する「キャリアキャンプ」と「修学旅行」だ。ほかにも、文化祭や体育祭、磯実習、芸術鑑賞会、弁論大会と、月1回ほどのペースで体験学習の場を設けている。

体験学習は、興味関心の広がり、新たな知識やスキルの習得、人間力の向上と、生徒たちにさまざまな成長をもたらす。中1、中2の宿泊行事では、あえてクラスの枠を超えて班を編成し、多様な生徒同士が交流する中で人間力を鍛えるようにしている。

体験学習を通じ、生徒は主体性も高まる。入学当初は教員の指示がないと動けなかった生徒たちが、学年が上がるにつれて指示の必要がなくなるほど自分たちで行動できるように成長していく。中3の修学旅行では、行き先や行程などの企画案を班ごとに考えてプレゼンし、投票で最終プランを決めている。

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年明けに中学の3学年で実施する「正月交流会」にも、生徒のアイデアを採用している。4年前に企画内容を刷新する際、生徒会に案づくりを任せてみたところ、球技大会と室内遊びを同時開催し、好きな方を選択できるという企画を提案してきた。室内遊びというのは、中学校舎全体を使って「かくれんぼ」などをするという案で、そのユニークな発想に驚かされ、うまく実施できるのかという懸念もあったが、失敗してもいいからやらせてみようというのが本校の教員の基本的な考え方だ。参加者が楽しめるようにルールづくりや準備に生徒主体でしっかりと取り組んだ結果、当日は大盛り上がりだった。今では恒例の行事として定着している。

自力でやり抜く力と自学の習慣を身に付ける「自習ステージ」

「自主・自律の精神」は学習面でも求められる。本校は週3日、放課後の80分間を「自習ステージ」と名付け、徹底的に自分一人で学習に向き合う時間を設けている。中1は全員参加だが、学年が上がると成績上位層は希望制とし、本当の自主学習へと移行していくという仕組みだ。

「自習ステージ」は、自力でやり抜く力と、自学自習の習慣を身に付けることを狙いとしている。時間内は教員への質問を一切禁止している。安易に答えを求めると、思考が止まってしまうと考えるからだ。分からない箇所があっても、まずは自分で考える時間が必要だ。

「自習ステージ」の時間外では教員が質問対応しているし、どうしても自力での学習に苦戦している生徒に対しては個別指導などの学習支援を行っている。

今年度から、クラス定員を削減した。2026年度の中1から入学者定員を増やし、1学年を40人強の3クラスから、35~40人の4クラスに編成した。近年の高い受験ニーズに応え、一人一人により行き届いた教育を実践するのが主な目的だ。「特に中学生のうちは、ゆとりをもって指導したい」という声が教員から多く上がり、1クラスの定員を削減した。教員の目が生徒一人一人により細かく行き届き、安心して学校生活を送れる環境が整った。

学習指導面だけでなく、中高一貫校で起こりがちな「6年間の人間関係の固定化」を防ぐ意味もある。進級時のクラス替えによる刺激を通じて、より豊かな人間性を育みたいと考えている。

今後の教育方針について、「やはり、生徒たちの力を伸ばすのが学校の役目ですから、現状に満足せずに学力の底上げを図っていきたいと考えています」と田中教頭は話す。2023年度に高校の新コースとして「S選抜コース」を設置した。東京大学、京都大学、医学部医学科を目標進路とするコースだが、大学合格のみならず、将来さまざまな分野のリーダーとなり得る人材の育成を目指している。この「S選抜コース」に進学できる生徒を増やしていくのが当面の目標だ。

一方で、本校らしさを失いたくないという。「本校を訪れた方々からは『生徒たちが明るくのびのびとしている』という言葉がよく聞かれます。伝統的な教育の方針が長く受け継がれる中で、自由で活気あふれる校風が形作られてきたのでしょう。この校風を大切に、人間的な幅を広げる教育をこれからも続けていきます」と語った。