千葉県公立小学校教員の松尾英明氏は、小中学校の情報教育が大幅に拡充されることについて、道徳の教科化を経験した立場から、新たな領域の追加が学校現場に重い負担をもたらすと警鐘を鳴らす。総授業時数は増やさない方針だが、準備すべき仕事の種類が増えるためだ。
情報教育の新設は新教科ではなく、既存の枠組みの再編
厳密に言えば、小学校で検討されているのは独立した新教科ではなく、総合的な学習の時間への新領域の付加である。中学校も、現在の技術分野を土台にした再編であり、完全なゼロからの出発ではない。
それでも全国共通の枠組みをつくる以上、目標と内容、学年ごとの系統、年間指導計画、教材、指導方法、評価規準を整える必要がある。学校では新しい授業準備と評価が生じ、教育委員会には研修と支援体制が要る。端末やネットワーク、著作権、個人情報、情報モラル、生成AIへの対応も続く。
教科を1つ増やすと「仕事の種類」が増える、制度化の重さ
松尾氏は小学校の現場で、制度化の重さを道徳で経験した。小学校では2018年度から「特別の教科 道徳」が全面実施され、検定教科書と記述式の評価が導入された。
「道徳を確実に扱う意義はある。一方で、子どもの内面をどう見取り、どのような言葉で評価するのかという難しさと、記録や文章作成という新しい仕事も生まれた」と松尾氏は指摘する。
教科として位置づけることは、授業時間を確保するだけではない。何を教え、どう評価し、どう記録するかという一式の仕組みをつくることなのである。
時間割の組み直しと負担の増大
時間割も単純な足し算ではない。年間時数が35の倍数でなければ、週や期間によって授業の配分を変える必要がある。教科担任制、専科教員の勤務日、特別教室の利用などの条件も重なる。新しい枠を1つ加えることは、教務主任が時間割全体を組み直すことを意味する。
同じ国語が週5時間から6時間になるのと、国語を1時間減らして新しい領域を1時間入れるのとでは負担が異なる。後者では、授業時間の総量が変わらなくても、準備すべき仕事の種類が増えるからだ。
松尾氏は「時数を減らしても『学びの余白』が減るだけではないか」と疑問を呈し、情報教育の拡充に伴う現場の負担を軽減するための十分な支援が必要だと訴えている。



