米国で、教師を置かずに人工知能(AI)を活用した「アルファスクール」が富裕層の支持を集めている。年間授業料は最大7万5000ドル(約1180万円)に達し、初の卒業生12人のうち11人が名門大学に進学した一方、教育手法をめぐっては専門家や保護者から疑問の声も出ている。
テック富豪が支持する「教師がいない学校」
この学校は、教師の代わりに「ガイド」や「コーチ」と呼ばれる大人がデジタルツールを駆使して指導するのが特徴で、起業家精神の育成などを重視する「新型エリート校」として、ハイテク業界の富豪たちの支持を獲得した。
中でも最も有名なのが、テキサス州オースティン発の「アルファスクール」だ。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は昨年7月、イーロン・マスクらが豪邸を構えるこの街で2014年に始動した同校が、ニューヨークやフロリダ州オーランドを含む全米十数都市への進出を計画中だと報じた。
アルファスクールの生徒が科学や数学、読解などの授業を受けるのは午前中の2時間のみで、残りの時間は起業家精神、スピーチ、金融リテラシーといった「ライフスキル」を学ぶ。短時間の学習にもかかわらず、同校の生徒の学力は「全米トップ0.1%レベル」に達するとうたわれている。
公立にも私立にも満足できない親たち
共同創業者で教育インフルエンサーのマッケンジー・プライス氏によると、同校のAIプログラムは平均的な生徒に合わせた画一的な内容ではなく、個々のレベルに最適化されている。そのため生徒は、学校でのほとんどの時間をワークショップなどに充て、仲間同士の交流に費やせるという。
NYTの取材に応じた12歳の生徒は、7年生(日本の中学1年生相当)に進級したばかりだが、すでに8年生の数学や10年生の英語を学んでおり、「他の生徒や先生の授業に足を引っ張られることがない」と話した。
サンフランシスコ在住の投資家は、息子をアルファスクールの幼稚園に通わせる予定だとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に語っている。「現在の教育システムは壊れている」と主張するこの人物は、地域の公立学校に満足できず、一般的な私立学校もほとんど検討しなかったという。「これからの時代に必要なのは、自力で世界を渡っていける人材だ。大事なのは、特定分野の知識を丸暗記することではない」と述べている。幼稚園生から8年生までが通うサンフランシスコ校の学費は年間7万5000ドル(約1180万円)とされる。
疑問視する声と監視の実態
こうした教育モデルに対し、教育学者からは「科学的な証拠はほとんどない」との指摘が出ている。また、保護者からは「娘たちはゾンビのようになった」との声も上がった。教育モデルのルーツは心理学者スキナーの「スキナー箱」にあるとされ、自宅でのパジャマ姿まで監視される仕組みが導入されているという。
トランプ政権はこの教育手法を「大きな可能性」と評価しているが、富裕層のエゴだとの批判も根強い。AI教育の最先端を走る同校の試みは、今後の教育のあり方に一石を投じている。



