埼玉県さいたま市立大宮国際中等教育学校5年(高校2年相当)の伊藤陸真さん(17)が、学校内に社会人との対話の場をつくり、中高生の孤立を防ぐ取り組みを続けている。自身の不登校やプロサッカー選手の夢の断念といった経験から、「予防的幸福」という考えに至ったという。
学校内で社会人との対話の場を開催
9月12日、同校の教室で、学生約20人が企業活動とは別にものづくりを行う企業のエンジニアの話に耳を傾けた。フィンランド発祥の対話手法「オープンダイアログ」を導入し、心理的安全性を高める工夫をしている。さまざまな分野で専門性を磨き、実務にも他の活動にも積極的に取り組む人を招待し、学生が話を聞き、気づきを得て、じっくりと対話できる場「りくまのしらない世界」を企画。基本的に月2回、土曜日の午前中に開催している。
これまでにショートムービー監督や、街を歩きながら問いを考える大学生中心の団体代表など多彩なゲストを迎え、今回で6回目。参加した学生からは「ものづくりは大規模な工場がなくても始められる」といった声や、「資金集めの難しさを知った」といった意見が聞かれた。
「予防的幸福」の考えに至るまで
伊藤さんはもともとサッカー好きの少年で、プロを目指した時期もあった。しかし、小学校高学年で学生生活がうまくいかない時期があり、約3カ月間不登校を経験。さらにケガも重なり、プロサッカー選手への夢は断念した。中学の頃に小中高生の自殺者が過去最多になったという報道を見て、「自分と似た困難を抱える人が命を絶つ、という現実を知った」ことが活動を始める契機になったという。
学校では成績や進路など評価されるものさしが限られやすい中で、「学校の外にいるさまざまな大人と出会い、多様な生き方や価値観に触れることが、困難を抱え込む前の予防につながるのではないか」と考え、「予防的幸福」という考えに至ったと説明する。学内外の中高生227人に「何が幸せと感じるか」をたずねる「幸せインタビュー」を実施し、「困難に直面した際に一つの視点ではなく、俯瞰的に物事を見る力が重要と学んだ」と話す。
今後の展望と課題
団体名「あんすたいる」は、非常識や既成概念にとらわれないという意味のアンリアルとスタイルという言葉を組み合わせ、「柔らかく多様な場にしたいという思いを込めた」という。ワークショップは参加者にきっかけを提供できている一方、「その後に何をしたいかを実行へ移す継続的な支援が不足している」と課題を分析。今後は学外での実践の場や参加者を広げる取り組みを計画している。
ワークショップは非営利で継続し、高校生と専門家や大学生をつなぐマッチングや伴走支援の事業化も視野に入れるという。埼玉県イノベーション創出拠点「渋沢MIX」会員でもあり、「高校生と社会人や事業者がもっと自然につながり、互いの経験やアイデアを生かせる場所になってほしい」と期待する。