不安は「隠れる」反応が慢性化…即効で軽減する人類史上最大の手立て
不安は「隠れる」反応が慢性化…即効で軽減する手立て

不安を感じたとき、すぐに解消する方法はあるのだろうか。明治大学教授の石川幹人氏(情報コミュニケーション学部)は、不安を動物学的な反射と捉え、簡単に取り組める対処法を提案している。石川氏の著書『科学が解明した 悩んでもしょうがないことリスト』(サンマーク出版)から、その内容を紹介する。

なぜ人は不安になるのか——恐怖の慢性化が原因

石川氏によれば、不安とは「小さな恐怖が慢性的に積み重なって解消されない状態」だ。恐怖そのものは、生存を脅かす危険を避けるための心の働きである。敵が襲ってきた場合、人間は「戦う」「逃げる」「隠れる」といった対処を行う。戦って勝てば高揚感、逃げ切れば安心感が得られる。

しかし、問題は「隠れる」という対処法にある。隠れていると、危険が去ったかどうかを正確に認識できない。敵に見つかる可能性が残るため、警戒感が持続し、ストレスホルモン「コルチゾール」の分泌が続いてしまう。コルチゾールは恐怖が去れば低下するが、不安状態では分泌が継続し、さまざまな細胞を破壊する。これがストレスが健康に悪影響を及ぼす主要因だと石川氏は説明する。

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不安には必ず発端となる恐怖の対象がある。例えば、嫌な上司から頻繁に小言を言われる場合、そのたびに下を向いてやり過ごしていると、警戒感が持続する。「今日もまた言われるかな」という予期不安が生じるのだ。家に帰っても職場のことを思い出したり、翌日の会話を想像したりして、不安が再燃する。

文明社会が生む不安の皮肉——死の恐怖が減ったからこそ膨らむ

現代社会は、自然界のように「誤った行動をとるとすぐ死ぬ」という状況ではない。上司に言い返したり、「また言ってら」と軽く流したりすれば、大した問題にならないはずだ。しかし、人間は動物的な反射から容易に抜け出せない。頭では死ぬほどの問題ではないとわかっていても、警戒心が膨らんでしまう。

石川氏はこれを「皮肉な関係」と指摘する。死にそうな恐怖が減ったからこそ、不安が膨らむというのだ。例えば、大災害を生き延びれば、危険を脱したと認識でき、不安が去る。同時に「上司の小言なんて大したことない」と思えるようになる。つまり、安全な文明社会では、「恐怖がやってきて解消する」という自然界の循環が失われたために、不安が高じている。私たちはごく小さな危険を過大視し、恐怖を慢性化させているのだ。

不安解消の即効策——「人類史上最大の手立て」とは

では、どうすれば不安を軽減できるのか。石川氏が提案するのは、動物学的な視点に基づいたシンプルな方法だ。不安の根源である「隠れる」反応を断ち切り、危険が去ったことを認識することが鍵となる。

具体的には、不安を感じたときに「自分は今、隠れているのではないか」と自覚し、意識的に「戦う」か「逃げる」かの行動をとることが有効だ。例えば、上司の小言に対しては、冷静に反論する(戦う)か、その場を離れる(逃げる)ことで、警戒感をリセットできる。また、帰宅後も職場のことを思い出して不安になる場合は、気分転換やリラックス法を取り入れ、危険が去ったことを脳に教える必要がある。

石川氏は、この「隠れる反応の解除」こそが「人類史上最大の手立て」だと述べている。文明社会では、物理的な危険は少ないものの、心理的な脅威が慢性化しやすい。そのため、意識的に恐怖の循環を断ち切る習慣が重要になる。

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夜の寂しさも同じメカニズム——部屋の工夫で軽減

石川氏は、夜に感じる寂しさも同様のメカニズムで生じると解説する。夜は視界が悪く、危険を察知しにくいため、動物は本能的に警戒心を高める。人間もその名残で、夜になると孤独感や不安が強まりやすい。

この寂しさを軽減するには、部屋の環境を工夫することが有効だ。例えば、照明を明るくして視界を確保したり、温かみのある色合いのインテリアを選んだりすることで、脳に「安全」を伝えられる。また、好きな音楽を流す、アロマを焚くなど、五感を通じてリラックスできる空間づくりが推奨される。

石川氏は、こうした小さな工夫が、不安や寂しさの慢性化を防ぎ、心身の健康を保つのに役立つと結論づけている。