精神科医の和田秀樹氏は、著書『老人は「キレる」くらいでちょうどいい』(集英社インターナショナル)の中で、高齢になっても前頭葉の機能を維持するには適切なアウトプット習慣が重要だと述べている。同氏によれば、新しい情報をインプットするだけでなく、自ら情報を発信するアウトプットが前頭葉を活性化させる鍵となる。
アウトプット不足が招く前頭葉の老化
和田氏は、老化の典型的な現象として「物忘れ」と「同じ話を繰り返す」ことを挙げる。後者は単なる物忘れだけでなく、前頭葉の萎縮によるアウトプット機能の衰えが原因の一つだと指摘。アウトプットの機会が減ると前頭葉が老化しやすくなるという。
特に定年退職後は、会社勤め時代に当たり前だった取引先や同僚とのコミュニケーション、会議での発言、報告書やメールの作成といったアウトプットの機会が激減する。家での会話もルーティン化し、頭を使って情報を発信する習慣が失われがちだ。和田氏は「そんな日々が長く続けば、前頭葉がどんどん萎縮したとしても不思議ではありません」と警鐘を鳴らす。
簡単にできるアウトプット習慣:雑談と日記
アウトプットの習慣として、和田氏はまず「雑談」を推奨する。近所の人や趣味の仲間とのゆるいつながりを持つことで、脳に適度な刺激が与えられる。また、文章を書くことは自己認識力を高める効果があり、特に「日記」は気軽に始められる方法だ。
しかし、日記の書き方には注意が必要だ。和田氏は「前頭葉をサボらせてしまう日記の書き方」として、単なる出来事の羅列や感情を伴わない記録を挙げる。例えば「今日はスーパーで卵を買った」といった事実だけを書き連ねる日記では、前頭葉はほとんど活性化しない。むしろ、「なぜ卵を買ったのか」「その時の気持ちはどうだったか」など、自分の思考や感情を言語化することで、前頭葉が効果的に刺激されるという。
逆効果になるアウトプットとは
和田氏は、かえって逆効果になるアウトプットもあると警告する。例えば、愚痴や不平不満を繰り返し書き留めることは、脳にネガティブなパターンを強化し、前頭葉の働きを低下させる可能性がある。また、他者を批判する内容の文章も同様だ。重要なのは、建設的で前向きな情報発信を心がけることだと述べている。
和田秀樹氏は精神科医として高齢者の脳機能に関する研究を行っており、本稿は同氏の著書からの抜粋である。同書では、高齢になっても「キレる」くらいの気持ちで積極的にアウトプットすることが、前頭葉の健康維持につながると説いている。



