熱波襲来:最高気温44度で学校閉鎖・死者増・停電
2026年7月、フランスは記録的な熱波に見舞われ、最高気温44度を観測した。この異常な暑さにより、学校の閉鎖、熱中症による死者の増加、電力供給の逼迫による停電など、社会機能に深刻な影響が及んだ。日本では想像しにくいこの事態の背景には、フランス特有の気候風土と社会事情が存在する。
冷房普及率の低さ:家庭の2~3割のみ
住宅向けエネルギーマネジメント企業Hello Wattの調査(2026年)によると、フランスの世帯における冷房普及率は一軒家で28%、集合住宅で18%と、全体では2~3割にとどまる。特にパリ圏など北部では冷房はまだ一般的ではなく、全国の普及率を押し下げている。一方、地中海沿岸の南フランスでは夏の3カ月間に気温30度を超える日が多く、一般世帯の6~7割に冷房が普及している。
気候風土と冷房不要の慣習
フランス北部の夏は基本的に低湿度で、最高気温が30度近くになっても日陰にいれば過ごせる気候だ。7~8月のパリ近郊でも平均最低気温は16~18度、最高気温は30度に届かない日が続く。日中は雨戸を閉め切って日差しを遮り扇風機で凌ぎ、夜は窓を開けて涼風を通せば冷房なしでも眠れる。年に数日の熱波は「喉元過ぎれば忘れられる」もので、冷房は贅沢品と見なされてきた。
長期休暇と学校の冷房不足
フランスでは3歳から18歳までが義務教育で、学年度は9月始まりの7月上旬終了。7月の大半と8月のほぼ2カ月は夏休みで部活動もない。暑い時期に児童生徒が登校しないため、学校に冷房は不要と判断されてきた(暖房設備はある)。0~2歳児の保育所は7月に開園するため冷房設置が増えているが、8月は休園し、保護者は年5週間の有給休暇を消化するのが通例だ。
猛暑地域の学校の1/3は休校
熱波がピークに達した際、フランス南部の猛暑地域では学校の約3分の1が休校に追い込まれた。冷房がない教室での授業継続が危険と判断されたためだ。また、熱中症による死者数は例年より20%増加し、電力需要の急増で一部地域では計画停電が実施された。
筆者はパリ郊外に25年以上居住するが、酷暑明けの翌日には最高気温が前日より10度下がり26度、朝の気温は17度だった。この「やれやれ」と通常運転に戻る感覚は、関東地方の大雪や台風に近いと感じるという。



