文化財の防災強化を 地域の宝も日々の備えを
文化財の防災強化を 地域の宝も日々の備えを

地震や台風、大雨による被害が相次いでいる。これらの災害は人命や財産だけでなく、地域の文化や土地の記憶をも奪う。地元のシンボルともいえる文化財も被災の例外ではない。文化財は復興の過程で住民らの心の支えになることが少なくない。文化の力を再認識するとともに、改めて文化財の防災強化を図りたい。

熊本地震で熊本城や松浜軒が被災

7月の熊本地震では、10年前の地震で石垣が崩落するなどしたため復旧が進められていた熊本城が再び被災した。熊本県八代市の国名勝の庭園・松浜軒も大きな被害を受けた。未指定の文化財にいたっては今も状況の把握が続いている。

「生きた文化財」ともいえる地域伝統の祭りにも影響が出ている。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」の一つに登録されている、八代神社の「八代妙見祭」は、11月の神幸行列が中止となった。八代神社は、楼門など県や市の指定文化財が倒壊し、境内には地割れが発生した。安全面を考慮した結果という。

復興への支援と未指定文化財の保護

復興に向けて指定文化財には補助があるとはいえ所有者の負担は重い。文化庁などは負担を軽減しようと松浜軒など3件を対象にクラウドファンディングを始めた。八代神社も別に復旧復興プロジェクトを立ち上げて寄付を募っている。全国からの幅広い支援を期待したい。

そんな中、熊本県がホームページなどで「被災した古い資料、すてるの待って!! その資料は、みなさんの地域の宝です!!」と、捨てる前に相談するよう呼び掛けて話題になった。古文書や古い生活道具、美術工芸品など未指定文化財の散逸や廃棄を防ぐのが狙いだ。

日頃の備えが文化財を守る

令和2年に国立文化財機構に設置された文化財防災センターは、文化財の減災や被災文化財の迅速な救援、その体制づくりと技術開発を進めている。基本にあるのは、文化財を守るには被害を小さくする備えが欠かせないという考えだ。

まずは、未指定文化財を含むきめ細かい文化財リストの作成を進めたい。地域に何があるのか、守るべきは何かを平時から把握しておくことが大切だ。文化財を守ることは地域の歴史と記憶を守ることだ。日常の備えという原則は人も文化財も変わらない。