東京ではこの夏、職員が短パンで出勤する——。そんなニュースが海外メディアを賑わしている。英ガーディアン紙は「東京都は省エネと暑さ対策のため短パンの着用を推奨」という見出しで、この取り組みを紹介し、少しでも涼しい服装で働けば熱中症を防ぎ、冷房に使う電力も抑えられる合理的な取り組みだと評価した。
しかし海外メディアが注目したのはそれだけではない。英BBCの見出しは「男性の職場での短パン着用に対し、女性からは『脚の毛ハラスメント』との声」。記事では脚の毛によるハラスメント=スネハラをそのまま「SUNE-HARA」と表記している。暑さと節電のための取り組みのはずが、いつの間にか「男性が短パンをはいてよいか」という身だしなみ論争に変わっている。その日本らしい展開を、BBCは興味深く伝えている。
海外から見えた日本の省エネの矛盾
だが、この光景を少し離れた場所から見ると、別の疑問が浮かぶ。なぜ日本では、これほど暑くなり、エネルギー価格が上がっても、議論されるのは服装や冷房の設定温度なのだろうか。
BBCは、短パン解禁の背景について、イラン情勢による電力需要の高まりに備え、節電を図る狙いがあると説明している。同じ報道では、アジア各国の対応も紹介された。在宅勤務や労働時間の短縮、電力使用の制限などである。
半世紀かけて築いた省エネの成功
もちろん、各国のエネルギー事情は異なる。それでも並べてみると、日本では危機への対応として、まず服装を含む一人ひとりの工夫が前面に出ているように映る。その背景には、日本が半世紀をかけて築いてきた省エネの成功がある。
日本は、省エネを国民生活に定着させることに成功してきた。冷房の温度を控えめにする。照明を消す。家電の電源を切る。服装を軽くする。企業も家庭も、長年にわたって小さな節約を積み重ねてきた。特に、エネルギー危機が起きるたびに、省エネで対応してきた。1970年代のオイルショックでは、工場、自動車、家電の効率を大幅に改善した。2011年の福島第一原発事故後には、全国規模の節電が行われた。そして今、イラン戦争によってエネルギー供給への不安が高まるなか、服装をさらに軽くして冷房を抑えようとしている。
国民に省エネを押し付けるだけの無策
これは単なる我慢ではない。日本は半世紀をかけて、省エネを技術、制度、企業経営、生活習慣の中に組み込んできた。しかし、海外メディアはその一方で、温暖化の原因となる石炭火力の使用量が増えているというアンバランスさを不思議がっている。職員が短パンをはいて省エネに努める一方で、化石燃料を使い続ける矛盾。決して再生エネ資源がないわけではないのに、国民だけに省エネを求める姿勢に、海外は疑問を抱いている。
日本人は、もう十分に節電した。クールビスは「市民の美徳」とも言える。だが、本当に怒るべきは「おじさんの短パン」ではないのかもしれない。政府の無策こそが、海外から見た日本の不思議さの本質なのだ。



