イタリアの高級車メーカー「マセラティ」のSUV「グレカーレ」のエントリーグレード「エッセンツァ」に試乗した。初めてマセラティを購入する層を狙ったモデルとして昨年秋に登場し、日本でのみ販売されている。エントリーグレードながら標準グレード「グレカーレ」の基本性能などはそのままのため、スポーツカーを得意とする同社の走行性能の高さなどを体験できた。
日本専用のエントリーモデル
「グレカーレ」という車種自体は2022年に登場した。車種名はイタリア語で地中海に吹く強い北東風に由来し、グレード名の「エッセンツァ」は本質、核心といった意味で、英語のエッセンスと同義語になる。
標準グレードの「グレカーレ」の価格は1065万円で、「エッセンツァ」はそれよりも75万円安い990万円に設定された。ユーロに対する現在の円安水準を考えると、輸入元が戦略的に価格を抑えて提供していると思われる。
主要な装備は標準グレードとほとんど同じだ。内装もフルプレミアムレザーを使用し、シートヒーター、アンビエントライト(車内の間接照明)などが装備されている。荷室の容量は535リッターで、後席を倒せばさらに拡張できる。
走行性能とサウンド
内燃機関は直列4気筒2リッターのターボエンジンにマイルドハイブリッドを組み合わせたもので、8速のオートマチックトランスミッションと合わさり、最大出力は300馬力になる。唯一の違いは、タイヤサイズが19インチと既存のモデルより一回り小さくなったことくらいだ。
一方で、追加料金なしの選択肢の幅は制限されている。ハンドルの位置は右側(左は受注生産)のみ、外装の標準色は白のみで、メタリックペイントの3色はオプションになっている。オプション項目を少なくすることで価格を抑えている面はある。
実際に運転してみると、一般道、高速道路と乗りこなしたが、エンジンとマイルドハイブリッドの性能によるものか、車両重量の1890キロを感じさせない軽快な走行性能が心地良かった。四輪駆動ということもあり、高速での加速安定性はもちろん、低速でも馬力があり、力強い走りができる。
エンジンサウンドは車内外で大きく異なる。車内ではさほど感じないのだが、車外では迫力あるサウンドが響く。運転する人にとっては、テンションが上がる演出といえそうだ。
燃費は未公表だが、今回の試乗で高速道路を中心に約100キロの距離を走行したところ、給油した量は9リッターであった。
マセラティの歴史と新たな顧客層
マセラティは1914年、マセラティ兄弟が始めたスポーツカーの工房から始まり、その後の様々なレースで活躍。第2次世界大戦後にフランスのシトロエンやイタリアのフィアットなどの傘下を経て、現在は欧州自動車大手ステランティスの傘下にある。有名なクルマとしては若きジョルジェット・ジウジアーロがデザインしたヒット作「初代ギブリ」(1966~1973年)などがある。
マセラティのクルマというと、その歴史から、現在販売中の車種も「グラントゥーリズモ」、「MCプーラ」や「GT2 ストラダーレ」といったスポーツカーが中心だ。スポーツカーは根強い人気がある一方、高価格のため顧客層が限られる。
「エッセンツァ」は人気タイプのSUVであり、かつ1000万円を切る価格と合わさって、マセラティに初めて乗りたい人には入りやすいモデルといえそうだ。日本市場の専用車という位置付けには、新しい顧客層の獲得を目指す期待があるように思えた。
主要諸元(試乗グレード「エッセンツァ」)
- 全長・全幅・全高(ミリ):4845・1950・1670
- 総排気量(L):1.995
- 燃費:WLTCモード(キロ/リットル)未公表
- 価格:990万円(オプションは除く)



