水銀や化学物質による健康被害研究の第一人者、デンマーク国立公衆衛生研究所のフィリップ・グランジャン博士(76)が9月27日、熊本県水俣市で講演した。胎児・幼児期の脳への汚染に警鐘を鳴らし、「次世代のために安全な世界をつくっていこう」と呼び掛けた。
水俣病公式確認70年で企画
講演は、水俣病を教訓に水銀の規制を定めた「水銀に関する水俣条約」の推進に取り組む市民団体「MICOネット」の主催。水俣病の公式確認70年にあたって企画された。グランジャン氏の水俣市訪問は1991年の国際会議出席から数えて5回目という。
グランジャン氏が環境医学の道へ進むきっかけとなったのは、医学生だった72年、ストックホルムでの「国連人間環境会議」で水俣病の被害を訴えた胎児性患者の坂本しのぶさんをテレビニュースで見たことだった。中学生だったしのぶさんは70歳になり、車椅子で講演会場を訪れた。グランジャン氏は会の冒頭、「勇気を持って立ち上がり、世界中に訴えた」とたたえた。
フェロー諸島での研究結果
食物連鎖の影響で、大型の海洋生物に水銀がより多く蓄積される。グランジャン氏は講演で、クジラを多く食べるデンマーク領のフェロー諸島で行った90年代の研究を紹介した。運動や言語、記憶の能力に関する発達の遅れなど、微量の水銀でも胎児や幼児に悪影響を及ぼすという調査結果を得た。
「人間の脳は複雑。発達初期に侵されると、生涯にわたるダメージが残るが、その影響は過小評価されがちだ」と指摘した。
水俣病の救済問題にも言及
講演と、前日の記者会見を通して、水俣病の救済の問題にも言及した。