米国の半導体製造装置大手アプライド マテリアルズ(AMAT)は9月29日(米国時間)、キオクシアが次世代メモリ技術を開発するイノベーションパートナーとして、米シリコンバレーに設立されるAMATの研究開発拠点「EPICセンター」に参画することを発表した。
4つの研究開発分野を共同で推進
両社は同センターにおいて、先進メモリセルおよび新たなメモリ構造、マルチチップ積層アーキテクチャ、積層型メモリ向け先端パッケージング、マテリアル エンジニアリングに関する研究開発を共同で進める。
生成AIや大規模言語モデル(LLM)の高度化に伴い、AIインフラでは演算性能だけでなく、メモリの容量や帯域幅、電力効率がシステム全体の性能を左右するようになっている。両社は、キオクシアのメモリ技術と、AMATの材料、半導体製造装置、プロセス技術を組み合わせ、次世代メモリの実用化を加速させるとしている。
メモリセルからパッケージまで一体的に開発
両社がEPICセンターで取り組む研究開発分野は、大きく4つに分けられる。1つ目は、AIアプリケーション向けの高性能・高密度な先進メモリセルおよび新たなメモリ構造の開発。2つ目は、限られたフォームファクタの中でメモリ密度と性能を高める次世代メモリ向けマルチチップ積層技術。3つ目は、マルチダイメモリソリューションの集積性能やインターコネクト性能を向上させる、積層型メモリ向け先端パッケージング技術。そして4つ目は、新たなメモリ構造の実現と量産性の両立を支えるマテリアル エンジニアリング技術となる。
複数のメモリチップを積層することで、限られた実装面積の中で容量を増やすことが可能になる一方、チップ間接続や放熱、電力供給、歩留まりなどの課題は複雑化する。両社は、メモリセルやチップ単体にとどまらず、複数のダイを積層したパッケージ全体を対象に、デバイス構造、材料、装置、プロセス条件を一体的に検討していく方針である。
材料とプロセスの革新で量産を加速
AMATの社長兼CEOであるゲイリー・E・ディッカーソン氏は、AIインフラには、より高いメモリ密度、広い帯域幅、優れた電力効率を備えたメモリソリューションが求められていると説明する。また、キオクシアの代表取締役社長である太田裕雄氏も、メモリの可能性を広げるためには、材料とプロセスに関する技術革新が重要になるとの認識を示している。
3次元構造を採用するメモリでは、積層数の増加に伴い、深い構造を高精度に形成する加工技術や、複雑な形状へ均一に材料を形成する成膜技術の難易度が高まる。積層型メモリについても、インターコネクトや接合材料、熱管理、パッケージ全体の信頼性が性能や歩留まりを左右する。両社は、製品開発の早い段階からデバイス構造と材料、装置、プロセス技術を同時に最適化することで、次世代メモリの高性能化と量産性の両立を図る。
総額約50億ドル規模のEPICセンター
EPICセンターのEPICは「Equipment and Process Innovation and Commercialization」の略で、AMATが米シリコンバレーに設立を進めている研究開発拠点である。顧客のプロジェクトに伴って投資額を段階的に拡大し、総額約50億ドルを投じる計画で、米国における先端半導体製造装置の研究開発投資として、過去最大規模になるとしている。2026年中の稼働開始を予定しており、初期研究段階から本格量産まで、新技術の商用化に要する期間を短縮することを目的に設計されている。
半導体メーカーは、AMATの研究開発ポートフォリオへ早期にアクセスし、材料やプロセスの試作と評価を繰り返す学習サイクルを高速化できる。また、半導体メーカー、半導体設計企業、半導体製造装置メーカー、大学などがセキュアな環境で共同開発を進めることが可能なため、次世代技術の量産導入を加速できるともしている。
今回の協業は、キオクシアが培ってきたフラッシュメモリおよびSSDの技術と、AMATのマテリアル エンジニアリング、半導体製造装置、プロセス技術を組み合わせ、次世代メモリをデバイスからパッケージまで一体的に開発する取り組みであり、EPICセンターを共創の場として活用し、AI時代に求められるメモリの高密度化、高性能化、量産性の両立を目指すとしている。