電気自動車(EV)への移行が世界的に加速する中、ガソリン車の廃棄が新たな環境問題として浮上している。日本国内では、2035年までに新車販売を全て電動車にする目標が掲げられており、既存のガソリン車の廃車が今後急増すると見込まれている。
廃車から排出される大量の廃棄物
自動車一台あたりの廃棄物は約1.5トンに上り、そのうち金属類はリサイクル可能だが、プラスチックやゴム、ガラスなどの素材は処理が難しい。特に、バッテリーや電子部品に含まれる有害物質の適切な処理が課題となっている。
経済産業省の試算によると、2025年から2035年の間に廃車となるガソリン車は累計で約3000万台に達する見通し。これに伴い、約4500万トンの廃棄物が発生するとされている。
リサイクル技術の現状と課題
現在の自動車リサイクル率は約80%だが、残りの20%は「シュレッダーダスト」として埋め立てられている。このシュレッダーダストには、有害物質が含まれることがあり、環境汚染のリスクが指摘されている。
「リサイクル技術の革新なしには、EVシフトは真の環境対策とは言えない」と、東京大学の山田教授は指摘する。同教授は、自動車メーカーとリサイクル業者が連携し、設計段階からリサイクルを考慮した「設計リサイクル」の重要性を強調している。
自動車メーカーの取り組み
トヨタ自動車は、廃車からレアアースを回収する技術を開発しており、2025年までに実用化を目指している。一方、日産自動車は、廃バッテリーを家庭用蓄電池として再利用するプロジェクトを進めている。
また、ホンダは、プラスチック部品のリサイクル率を向上させるため、素材の統一化を推進している。これらの取り組みは、廃棄物の削減に貢献するが、コスト面での課題が残る。
政策と規制の動き
環境省は、2024年度から廃車処理に関する新たな規制を導入する方針だ。具体的には、リサイクル率の目標値を90%以上に引き上げるとともに、有害物質の含有量制限を強化する。
さらに、欧州連合(EU)は、2023年に新たなバッテリー規則を施行し、廃バッテリーの回収率やリサイクル効率に厳しい基準を設定している。日本もこれに追随する動きを見せている。
今後の展望
EVシフトの成功は、単に販売台数だけでなく、廃車処理を含むライフサイクル全体での環境負荷低減にかかっている。自動車メーカー、リサイクル業者、政府が一体となった取り組みが求められる。
「環境に優しいEV社会を実現するためには、廃車処理のインフラ整備と技術開発が不可欠」と、日本自動車工業会の担当者は語る。今後の技術革新と政策支援に注目が集まる。



