能登半島地震で大きな被害を受けた七尾市の和倉温泉で今夏、二つの旅館が再建を果たした。これで和倉温泉旅館協同組合加盟の19軒のうち、半数超の11軒で営業を再開。2028年度頃の全旅館再開に向けて一歩ずつ前に進んでいるが、再開できていない旅館では建築資材高騰などに頭を悩ませている。
「奥田屋」が一棟貸し形式で再出発
「一度は廃業も考えたが、これからも和倉温泉の一員として頑張りたいという気持ちが湧いた」。2年半ぶりとなる7月9日に営業を再開した創業約120年の老舗「奥田屋」の5代目、奥田一博代表(47)は再建への思いを口にした。
奥田屋は3階建てで全8室を備える旅館だったが地震で半壊。公費解体を余儀なくされた。ゼロからのスタートになり、新たに旅館を建設した。被災後に建て直し、営業を再開した初めての事例になった。
新たな旅館ではそれぞれに玄関がある「一棟貸し」形式に変更。全4室に源泉掛け流しの露天風呂を設置し、2階建ての2棟には長期滞在者向けにキッチンや洗濯機なども配備した。
宿泊者には「温泉街そのものを楽しんでもらいたい」という思いから、食事を提供しない「泊食分離」方式をとる。奥田代表は「多くの方にぜひ名湯を体験しに来てほしい」と話す。
「白鷺の湯 能登 海舟」も営業再開
地震では組合加盟の旅館全てが建物に被害を受けるなどして休業。能登随一の観光地は苦境に立たされたが、徐々に復旧が進み、昨年末までに9軒が再開した。老舗の「加賀屋」も新館建設に向けた地鎮祭を今月25日に行う。
7月16日には共立メンテナンスの「白鷺の湯 能登 海舟」が営業を再開。21年開業と比較的新しかったが、地震の影響で客室や配管に被害が出ていた。
ほとんどの客室には露天風呂が設置され、七尾湾を一望しながら温泉を楽しむことができる。番頭の嶋西宗隆さんは「想定よりも再開が遅くなってしまった。他の宿とも協力しながら盛り上げていきたい」と意気込む。
「多田屋」は資材高騰で規模縮小の再建に
再建できていない旅館では、中東情勢の影響などによる建築資材の高騰などに直面している。1885年創業の老舗「多田屋」はその一つだ。
地震でそれぞれの棟をつなぐ部分が割れるなどの被害を受け、旅館全体で半壊の判定に。当初は新たな棟を建てることも検討したが、建材費用の高騰で予算を大きく超過した。
6代目の多田健太郎代表(50)は「これまでの客に『また来てね』と言えない値段になってしまう。その価格設定では今後15~20年続けることはできない」と打ち明ける。地震前にあった6棟のうち2棟を解体し、それ以外は修繕することに決めた。
60室あった客室は、再開後は28室になる見込みだ。早くて2028年4月末の営業再開を目指している。多田代表は「それぞれの旅館の特徴が和倉温泉の魅力の一つだった。つらい中でも希望を持ち続け、一日でも早い再開を目指したい」と話す。



