商店ゼロの離島から自販機2台撤去…飲料業界の苦境映す「空白」、住民の模索続く
商店ゼロの離島から自販機2台撤去…飲料業界の苦境と住民の模索

徳島県牟岐町の出羽島で、商店が一つない離島に残されていた自動販売機2台が撤去された。飲料メーカーの採算悪化や物流費高騰が背景にあり、地域の「空白」が広がっている。住民は無人販売や商店設立など新たな模索を始めている。

島の生活を支えた自販機、撤去の背景

出羽島はかつて1000人近くが暮らし、漁業で栄えた。しかし現在は約35人が暮らし、その8割を高齢者が占める。島内に自動車は1台もなく、手押し車が主な運搬手段だという。

商店は5年以上前に姿を消し、島にある飲食店は完全予約制の1軒のみ。昨年5月、船着き場近辺にあった自販機2台が撤去された。撤去された自販機は島に住む個人の所有で、業者が港まで運んだ飲料を所有者や住民らが連絡船で運び、1本ずつ補充していた。しかし、病気などでこの手運びが限界となった。住民側に引き継ぐ余力はなく、存続を求めてメーカーに問い合わせても「会議で決まった」「管轄外」との返事だった。

飲料業界を取り巻く厳しい現実

自販機は、飲料メーカーなどが設置する以外にも、土地の所有者が場所を貸したり、機械を買い取って自ら運営したりするものまで様々なタイプがある。メーカーも設置者も利用者が多いほどもうかるが、物流費や原材料費の高騰で1台あたりの採算ラインの悪化が急速に進んでいる。

昨年以降、ダイドーグループホールディングスは過去最大の赤字を計上し、コカ・コーラボトラーズジャパンや伊藤園も多額の損失を処理した。ポッカサッポロフード&ビバレッジは自販機事業そのものを今月1日、新興勢力のライフドリンクカンパニーに譲渡した。各社は生き残りをかけ、もうからない自販機の撤去や見直しを含めた徹底した効率化に突き進む。

飲料売り上げの9割が自販機経由のダイドーは、売れた本数からAIが割り出す策に従って配送員が補充していく仕組みを取り入れている。配送歴20年以上のベテラン男性によると、1台あたり10分の作業削減になる。1人平均180台を担当し、1日30台ほどを配達するだけに、その効果は大きい。

行政の支援は限定的、住民の新たな模索

自販機関連の管轄は流通政策を担当する経済産業省や農林水産省、食品衛生を担う厚生労働省と多岐に及ぶが、自販機の存廃に関わる政策はなく、目立った議論もない。防災や防犯機能があっても、あくまで営利ビジネスであり、公的支援の枠組みからこぼれ落ちてしまう。

牟岐町政策監の白木健治は「あれば便利だが、連絡船の輸送や塩害を考えると採算は取れない」と指摘する。潤沢な財源を持つ東京都は補助を出し、小笠原諸島の自販機が維持されている。だが、税収や交付税が減り続ける町に財政余力は乏しい。「行政が手を貸せる状況ではない。町が飲料を箱ごと送る方が安上がりになるだろう」と話す。

一方、島では新たな動きも始まっている。イギリスから移住したニコラス・ラッセル(60)は「人同士のちょっとした関わり合いが欲しいなと思った」と、島で購入した空き家に残されていた冷蔵庫を使い、ネット通販で仕入れた飲料の販売を始めた。民宿の木村は商店を立ち上げる道を模索し始めている。「不便さを楽しめるか。ない中で何をするのか、何が本当に必要なのか」。3年前に移住してきた濱美樹(73)の問いも心に響く。

かつての経済や社会の勢いが失われ、当たり前の風景が消えていく中で、地域の営みを住民自らの手やしなやかな工夫で紡ぎ直す。島では、そんな新たな節目を先取るような日常が始まっていた。