津波から身を守る「津波救命艇」の導入が、太平洋沿岸部を中心にじわりと進んでいる。今年4月の三陸沖を震源とする地震で津波警報が発表されるなど、津波を伴う地震が相次ぐ中、高所避難が難しい高齢者らを抱える自治体や民間施設が活用を模索している。一方で、普及には国の支援が乏しいなどの課題も残る。
大分県佐伯市に1隻配備
5月下旬、大分県佐伯市蒲江のレストラン兼農水産物直売所「かまえインターパーク 海べの市」の敷地内に、津波救命艇1隻が配備された。山岡均店長(59)は「何かあれば、お客様はもちろん、スタッフも全員無事でいられるように安全を確保したい」と力を込める。
救命艇は長さ8.7メートル、幅3.5メートル、高さ3.1メートルで、重さ3.2トン。座席数は25を備える。熊本県あさぎり町の総合建設サービス会社「味岡」が大分県に寄贈し、佐伯市が配備を希望したことで2020年に譲り受けた。
南海トラフ地震想定
南海トラフ地震が発生した際、同市には最短16分で津波が到達し、最大14メートルになると想定されている。海に面する同施設は、観光客らが1日平均で最大1000人利用する。高台まで直線距離で約600メートルだが、災害発生時には足腰の弱い利用者を中心に艇内へ誘導することを検討している。
東日本大震災後、機運高まる
救命艇は、津波で多数の犠牲者を出した2011年の東日本大震災後、活用の機運が高まった。国土交通省は2014年、安全基準の指針を策定。現在は3社が指針に沿った製品を生産し、産業機械大手「ヤンマー」(大阪市)も今年度中に参入する予定だ。



